俺のゲーム

 気づいた時には、俺は自分の部屋にいた。

 あれ、俺って何してたんだっけ? 全然思い出せない。でもいいか。

 うーん、まだ頭が痛いし、眠い。眠気覚ましに久しぶりにパソコンのRPGでもしようかな。

 だが、いざログインしてみると、かなりのアップデートが来ていたみたいで30分も待たされた。

 その待ち時間をああだこうだと使っているうちに、目も覚めてきて、当初の目的が無くなってしまった。

 まあいい、久しぶりにやってみたいしな。

 このゲーム、暗黒の救世主(セイバー オブ ダークネス)という、厨二病感たっぷりのこのゲームはPVPであり、基本的にはレベルによって勝敗が決まることはないゲームだ。だがレベルなるものは存在している。ではなぜあるのかと言えば、それはきっと、『俺レベル○○だぜ』『すごいだろう』と言わせてあげることが大きな理由だろう。

 そして、あと少しの理由は、レベルが高くなることによって使える武器の数が増えることだろう。

 それなら、レベルが大きく関係あるのでは? となるかもしれないが、このゲームは、最初に使える武器(双剣)がスペック的に一番強い。と、攻略に書いてある。

 つまり、たいていの人にとっては、本当にレベルは必要ない。

 もちろん他の、例えば大剣や、銃などの武器の方が戦いやすい人もいるにはいるだろう。

 だが、この双剣はとにかく動きが早いのだ。

 だからプレイヤーの約8割が双剣という、同じような図が毎度展開され、そのおかげで、このゲームはプレイヤーたちに、新鮮さがない。飽きる。と罵られ、クオリティは高いのにクソゲー認定されている。

 ちなみに、俺がやっている理由は、変にレベルを上げたせいで、止めるに止められなくなってしまったからだ。……レベルも関係あるじゃん。(主に運営にとって)

 ちなみに俺はユウというニックネームでトップ100のランカーだった。まあ、これは過去のことで、今のランキングではランク外になっていたが。

 そしてダウンロードが終わり、久しぶりにやっていると懐かしさも相まって中々面白い。

 PVPではありながらも、グロさはほとんどなく、そして、相手をやっつけるこの爽快感。うん、やはりいい。

「あれ、なんですか? このゲーム」

「いわゆるPVPってやつだ」

「えっ、この……なんというか気持ち悪い雑魚モンスターみたいなやつで戦うんですか?」

 そのモンスター(主人公)は、某RPGで序盤に出てくるス○イムの顔をブルドッグの顔みたいなものにしたやつだ。だが、気持ち悪いというのは撤回してもらいたい。ブルドッグだってブサかわって言われているだろ。その体をス○イムにしただけだろ。

「全然気持ち悪くないだろ。よーく見てみろ、可愛いだろ。……ん?」

 あれ、波留? にしては、声に上品さが感じられる。じゃあ、お母さん? にしては、声が若い。じゃあ誰だ? と、ここまで考えたらさすがに分かった。そして、確認しようとおそるおそる振り返ると……。

「なんで黒雪がいるんだ!」

「えっ? そ、それはまあ色々あって」

「色々って何だ!? 色々って」

「相原さんが倒れてから松田さんが来て、松田さんと2人掛かりで、家まで運んできたんです」

 努めて冷静な顔で、でも足は若干震えながらも答えてくれた。

「それで、なんで快は帰って黒雪だけがいるんだ? それに、どうやって家に入った?」

「それは、ベルを鳴らしたら、妹さんが何も聞かずに中に入れてくれたので。あと、私だけがいるのは、松田さんに、見守っていてあげてとお願いされたからです。私も相原さんが大丈夫かどうか心配でしたし」

 波留が何を考えていたのか恐ろしい。

「……そ、そうかー。……それはありがとうな、でもな一人の女の子がなんの警戒心も持たずにここにいるのは危険だと思うんだよ。俺はもう平気だから。もう心配しなくても大丈夫だぞー。ほ、ほら、俺も色々とあるからな」

 俺の理性や精神をぐらつかせるようなことばっかりをこの短期間でしてくる子、やっぱりただ者とは思えん。このままでは、大変な目に合うオチがもう、すぐそこまで見えている。これは、早々に俺の家から去ってもらうしかないな。

「なあ、もう俺は平気だから帰ってもいいぞ」

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