限界突破
今日は快斗と二人で出掛ける日。
そして生憎の雨。
服は咲っぺプロデュース。
「なんか雰囲気違うね⁉︎」
快斗は耳まで赤くして私を見つめている。
「……変? というか、快斗」
「はひっ」
「靴下両足で種類違うけど……ファッション?」
「明らかに違うでしょ!」
と咲っぺがツッコミに入ってきては歩が快斗に靴下を渡した。
「待って……丈の長さすら違うし‼︎」
咲っぺがツボに入っている。面倒になってきたところで私と快斗は「おたく」を出た。
恋愛ものを書くと決めると、快斗に参考程度にとゴリ押しされ、二人で出掛けることになったは良いが、どこかぎこちない雰囲気が漂う。
「……っ。心優、結局行きたいところは決まったの?」
電車の中で快斗は沈黙を破り、今日の行き先を尋ねてきた。このお出掛けは私の行きたいところに行けるだけ行くというものだ。
「うん。水族館行って、このエリアのカフェ巡りして、そのあと時間があったらこの辺で買い物して行きたい!」
私はスマホの地図画面を指しながら彼に説明する。
「俺は平気だけど……心優疲れない? 結構歩きそうだけど」
「そのためのカフェ巡りだよ! 座って美味しいもの食べて休憩して、歩いて、休憩して……って繰り返せばなんとかなる!」
「なら良かった。あ、この辺のカフェ一回バスケ部で行ったことあるんだけど、めっちゃ美味しいパンケーキの店あったんだよな、そこ行かない?」
「行きたい! ……っていうか、バスケ部女子力高くない⁉︎」
「歩には負けるけどな……。去年の部長がスッゲー女子力高くて、マネージャーの仕事も手伝ったりしてたらしいんだけど……。同学年のマネージャーが『マネの仕事する余裕あるなら練習して全国連れてけ!』って言って怒ったらしい。……あとで聞いたら『あの人仕事早いから私やることなくなっちゃうんだもん』って言ってたけど」
私はその内容にも少し笑ってしまったが、それよりも快斗のマネさんのモノマネの方が面白くてつい肩が震えてしまう。
最近、よくバスケ部内部事情などを彼から聞くことが多いのだが、なかなか面白い。ネタになりそうなもので溢れている。学生が主人公の物語はきっと、沢山のネタが詰まった何気無い日々の積み重ねから成っているのだと改めて思うと、無性に本を読み漁りたくなる。
「降りる駅ってこの次だよね?」
何を読もうかと考えていると、快斗が尋ねてきたので頷くと、彼は目を輝かせながら言った。
「水族館とか久し振りなんだよな……。去年リニューアルしたって聞いたからめっちゃ楽しみ」
「私も」
笑い返すと、彼はハッとして顔を背けてしまった。返答があまりにも無難だったのかと不安になっていると、ヘクチッと控えめなくしゃみが聞こえてきて脱力した。
くしゃみまで女子力高いとか、私もう女子辞めようかな。
Welcome to our house! 水楢 葉那 @peloni
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