仕える者達
勇の友人がやってきて、宴会をするのはいいが、長い。飽きるわ。付き合わされている妾の身にもなれ。
なので一応断って席を外した。勇には聞えまいが、そこはまあまあ。
――と言ってもこの成りではどこにも行けんが
真の姿に戻ればどこにでも行けるが、それは駄目だ。
妾は勇と約束をしたのだから。勇曰く「あれ危ないんだろ?だからいざと言う時以外はあのデッカイ姿に戻るなよ。これはペットと飼い主との約束だ」と。
自分は妾を連れて来た責務を果たさん癖に、妾にばかり約束を押し付けるのはどうかと思うが、寧ろ死ねと思うが、妾はそれを受けた。
理由が危ないからなのもイマイチ納得できんが、危ないで済まないと思うが、そこはまあ良い。危なくないとは絶対に言えんし。
なぜそのような約束をしたのか、実の所妾も解らん。此処に居れば素の自分を出せて楽だからと尚美には言ったが、それは理由の一つに過ぎない。
なんにせよ、妾はこの仔狐で満足…とは言えぬが、そこそこ満足しておるから良いのだ。
――どこにも行けんのは同感だが、それにしては足取りに迷いがないな?
何故か付いて来た魔狼に不思議がられる。
――貴様はいいのか?宴会に混ざらなくとも?
――面白いと言えば面白いが、正直飽きた。キョウが不憫じゃないのは有り難いし
不憫とな?その意味が解らず、妾は可愛らしく小首を傾げた。
――貴様は実にあざといな?それは地なのか?
――すまぬが、貴様が何を言いたいのか解らぬ。妾はあの鬼が不憫の方に興味津々なのだ
魔狼は嘆息して話す。
――キョウの元に来て知ったのだが、キョウは実に金使いが荒いらしい。金が入ったらバイクを買ってしまうとか何とか
ふむ、バイクとは車輪が二つ付いている車の事じゃな。
妾は頷いて応える。
――尚美も車が欲しいからと勇を馬車馬の如くこき使ったと聞くが
――そうなのか?まあ、それでソフィアが激怒してな。何でも通帳にそんなに金が入っていないにも拘らず、バイクが30台もあるのだ。保管場所や経費を考えると、とてもじゃないがやって行けん、と。だからソフィアが管理すると
あの女、鬼と添い遂げて間もない筈じゃなかったか?それこそ妾がこの家に来たよりも少し遅いくらいな筈だ。尚美とあの女の会話で聞いたのだから間違いない。
いや、そもそも添い遂げておらんのだったか。婚約、とか言っていたような気がする。
しかし、それでは仮契約のようなもの。そんな状態なのにそこまで踏み込むのか?
――先ずは無駄なバイクを売り払って現金を用意した。3台だけ残して残りは売り払った。あの時のキョウの号泣っぷりには胸を痛めたな…このフェンリル狼が仕えている男が号泣とは…
魔狼が同情を禁じ得ぬ程泣いた、と言うのか…想像しただけで面白いが。
――キョウのバイクは意外と金になってな。その中から3万、キョウに渡した。そしてこう言ったのだ。あなたのお小遣いは月3万よ。と。四つん這いで項垂れ、今にも死にそうな声で「はい……」と言った時は後悔した。この男に仕えた事に
それは……だが、勇も月5万の給料だった筈。人間界に潜伏して旅館の仲居の仕事をやった妾には解るが、月5万はありえん。絶対に生活が出来ん。こっちも尚美が金の管理をしているので、殆ど小遣いみたいなものだが。そう言えば勇は給料明細を貰っているのだろうか?訴えたら勝てるレベルだぞ?
――それと大量のバイクを保管していたガレージだが、それを倉庫として貸し出した。キョウには事後報告だ。流石に勝手な事をやったから怒ると思ったが、「あ、うん…そうか…」で終わった。その時思った。俺は取り返しがつかない事をしたのではないか?と。この男に仕えた事を心底後悔した瞬間だった
ふ~む…勇と大分被るが、勇なら文句は言うな。その後に大量の鼻血を流す事になるが。
まあ。主がヘタレなのは可哀想だとは思うが、妾よりはマシだ。
妾の飼い主は北嶋 勇なのだ。その苦行に比べたら何と言う事は無い。
魔狼の愚痴を聞きながら向かった先は龍の海神の聖域。あ奴は神だが、妾と共闘した故に敵には当たらぬ。そう言えばあの時は全盛期の妾に戻っていたが、何故だろうか?
まあ良い、考えても詮無き事。妾は軽快に進むが、魔狼の脚が止まる。
――どうしたのだ?
――……これは神気…貴様もそうだろうが、俺も神と反する存在。これ以上進めばどうなるか解らん
ふむ。神と会ったら平常ではいられぬと。最悪裏山で戦う事になるかもしれんとの危惧か?
――しかし、そうなれば貴様は恩知らずと言う事になるが。宴会で食った魚介類は龍の海神が与えた物だからな
――何を言う?ここは山の中。海産物などある筈も無い
――貴様は実はあざといようだな?小首を傾げて可愛さアピールか?
――すまんが、貴様が何を言いたいのか解らん。俺は山の中に海の物がある筈が無いと言っているのだが
まあ、解らん気持ちは解る。そしてデジャヴを感じたが。
――その疑問を解消するには、やはり海神の聖域に足を踏み入れなければならん。案ずるな。妾が一緒なのだから、海神は貴様に手を出さん
もしもその気だったら家に来た時点で何かしらの意志を出しておる。警告と不快の神気をな。
そう言って歩き始める妾。魔狼も躊躇しながらも後に着いてくる。
そうして辿り着いた先は龍の海神の聖域。奇跡の池とも呼ばれておる。尤も海神自らがそう呼んでおるのだが。
――……流石は聖域…凄まじい神気だな…
魔狼自身も意識しておらぬようだが、潜在的敵意を発しておる。魔力が緊張しておるのだ。
それにも咎めないのだから気付いても良さそうなものだが。危害を与える気はないと。
――まあ良い。貴様に先程申したな?宴会で食った魚介類は海神が与えた物だと
――ああ。そう言ったな
――なれば池を覗いてみよ。その意味が解るだろう
言われて恐る恐る池を覗き込む。そして余程驚いたのか、後ろに跳びはねた。
――淡水の海の生物が棲んでいるだと!?
その驚きっぷりは実に愉快。勇も鬼に対してそう思ったのだろうか?
そしてそのリアクションが奴にとっても愉快だったようで、中心の島から海神が現れた。
――騒がしいぞ狐。散歩なら静かに歩け
その姿を見た魔狼は、更に後ろに跳びはねて海神から距離を取った。
――貴様、いきなり現れるでない。客も驚いておるではないか
――そう言われても、此処は我の聖域、我の土地。我がどう振る舞おうが、我の自由なのだがな
妾と海神は互いに笑い合う。緊張している魔狼が面白いからだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
驚いた。驚愕した。
基本的に敵同士な筈の神と妖が蟠りもなく和気藹々と話している…
いや、狐が敵と見做していない、海神が敵対していないのは今までの話から何となくは理解していたが、まさか此処までとは…
それに、この池…淡水に海の生物が棲んでいるのはこの海神の加護。
宴会に使われていた食材は、海神が与えた物だと言うのはこの事だったのか…!!
――何故……
問うつもりは無かった。無かったが自然と口から出る。
――何故あの男にこれ程までの加護を与える?
海神は笑う。それが問いに対しての答え。言葉を発しなかった。
――……キョウが何故か濡れて帰って来たのは貴様の仕業か?
問わなくとも解っている。海神がそんな事をする理由がない。だが、会話を続ける口実を探すように、つい発してしまう。
――否。あれは勇の仕業だ。まあ…気の毒だとは思ったが、貴様も料理を振る舞われたのだ。その点は鬼に感謝するといい
……あの男…北嶋 勇がなにか悪戯でもしたのか?
感謝とは…キョウがこの池に入って食材を獲ったからなのか?
――……あのキョウが怒りを見せないで、されるが儘な筈はないが?
ソフィア相手にはされるが儘なのだが。ジジイも少しは弟子を庇ってやればいいものを。一応俺が仕えている者なのだぞ?
――まあ…相手が勇だからな。文句を言っても仕方がない。暖簾に腕押しだ。貴様も何となくは理解できよう?
それは…確かにそうは思う。
あの男は俺の幼体を一発で見抜いたし、意味不明な理由でキョウと戦おうとしたからな…
それに、あの男が狐を仕えた…いや、飼ったから、それに対抗して俺を取り込んだような事も言っていたな。
――改めて聞くが、あの男は何なのだ?
俺の問いに狐と海神が同時に答えた。
――怠け者の馬鹿者だ
――怠け者の馬鹿者よ
……その怠け者の馬鹿者にこれ程の加護を与え、大人しく愛玩動物に収まっている貴様等は一体…
――鬼に仕えて幾日も経っておらんのだろう?それでも仕えたる理由が鬼にはある。そうだな?
海神に振られて素直に頷く。
俺はキョウの力を見て仕える事にした。あの狂暴な鬼神を制御してトール神に勝ったキョウの力に、素直に感嘆したからだ。
――鬼は勇に対抗する為に貴様を取り込んだのだよな?
その質問にも頷いて肯定する。
――鬼は勇に敗れた。自慢のミョルニルを破壊されてな
それは聞いた覚えがある。ミョルニルを斬った武器が皇刀草薙だと言うのにも驚いたものだ。
ミョルニルが雷を纏っての超強力な打撃武器ならば、草薙が望むものなら何でも斬る剣。
それは鉄だろうと、人だろうと、神だろうと、妖だろうと、ミョルニルだろうと、雷だろうと。
斬る為だけに生まれて来た刀だが、当然使い手も選ぶだろう。
ミョルニルを斬ったと言うのなら、草薙を完全に自分の物にしていると言う事だ。
選ばれていなかったら、ミョルニルの圧倒的なパワーで粉砕されている筈だから。
――その鬼も勇を目標としておるのだ。怠け者の馬鹿者を目標に精進し、魔狼を取り込んだのだ
――それは理解している。いや、理解したと言った方が正しい
確かにあの男を目標にしているのは解ってはいたが、キョウならば簡単に追い越せるだろうと思っていた。
あの男はそんな生易しくはなかった。キョウの選んだ道は凄まじく険しいと認識を改めざるを得ない。
海神と妖狐が付き従っているのも含めて……!!
――まあ、実の所、我にもよく解らぬ。勇の底を見た事が無いのでな
言いたい事は何となく解る。従うのには理由は必要なのだろうが、それを凌駕した所にあの男がいるのだろう。
俺がキョウに仕えた理由とは全く違った答えを、海神と妖狐は得たのだろう。
大体見えぬ、聞こえぬ、感じぬと言うのに霊能者を名乗っているのだ。それ自体がそもそもおかしい。それじゃあ普通の人間だろ、とは思う。
だが、あの男を普通とは絶対に思えない。
何と言うか…良かった、と言わざるを得ない。
仕えた者があの男じゃなくて、本当に良かったと思わざるを得ない。
そうなると、海神と狐が不憫なような気がするが…そこはまあまあ。
海神も実の所よく解らないと言っていたのだ。その解らないが正解なのだろう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ソフィアさんから教わったレシピはサーモンとじゃがいものスープとピッティパンナ。
新鮮なメジマグロが手に入ったので、サーモンの代わりにマグロで代用した。ピッティパンナとはじゃがいもの肉野菜炒めの事で、肉はベーコンを使った。スェーデンのハムの代用らしい。
故郷はじゃがいもが主食でよく食べています。と笑いながら教えてくれた。成程、どっちもじゃがいもを使った料理だ。
ミートボールもよく食べるらしいけど、今回は無し。ザリガニ料理もあるらしいけど、それも無し。
「こんなに立派な海老があるんですからザリガニは今回無しで」
「スェーデンって、ザリガニを食べるの?」
「はい。ザリガニ祭りが8月にありますよ」
へ~。と感心する。北海道のどこかではレイクロブスターと言う名前でザリガニを出しているらしいが、私は食べた事が無いので興味津々だった。
確かフランス料理にも使われているんだよね。ザリガニって。
「それよりも神崎さん。私にも日本料理教えてくれませんか?キョウの口に合うように努力しなくちゃですから」
「日本料理って、葛西は何が好きなの?」
「お寿司、ですかね?日本に来た初日に連れて言って貰いました。回っていたのに酷く驚きました!!」
グーを握って興奮を露わに。つか回転寿司って…美味しいけども、もっといい所に連れて行ってあげなさいよ…
でもお寿司か…じゃあ、と腕をまくる。
「このお寿司はそんなに技術を必要としないから、すぐに覚えられるかも」
「そんなお寿司があるんですか!?キョウが言うには沢山修行しなくちゃ美味しいお寿司は握れないらしいんですけど!!」
まあ、本職の物はそうでしょう。だけど家庭で食べるのならこれで充分!!
先ずは酢飯を作る。ちゃんと桶にご飯を移してお酢や調味料と混ぜなきゃ、ビショビショになって食べられたものじゃないからね。
そしてメジマグロを部位ごとに切り取った物を通常のネタよりも細く切る。
丁度キュウリもあるからこれも使いましょう。キュウリも細くカットする、と。
そして四角く切った海苔の上にシャリを乗せて、マグロときゅうりを入れてクルクルーっと!!
「はい、手巻き寿司です!!簡単でしょ?」
「凄い!!お花みたい!!」
大袈裟に喜んでくれるのはいいけど、ホント簡単なんだから。子供が楽しんで巻いて作る、団欒の食べ物でもあるんだしね。
「今回はマグロがあったからそれを使ったけど、イカでもサーモンでも出来るよ。キュウリの代わりにかんぴょうでもいいし、どっちも入れてもいい」
「サーモンは大好きです!!家に帰ったらさっそく作らなきゃ!!」
きゃいきゃいはしゃぐソフィアさん。可愛い、と言うか美人さんがより際立つなぁ…
それにしてもあの胸…歩くたびにボインボインと揺れているじゃない。
「?どうしましたか神崎さん。なにか笑顔が引き攣っている様に見えるんですが?」
「い、いやいや。何でもないのよ。さ、さあ、伊勢海老もあるから、お刺身とお味噌汁も作りましょうか!!」
「お味噌汁も覚えたいですね。それも教えて貰えますか?」
本当に葛西の為に頑張ろうとしている気概が伝わってくる。
葛西に助けられた事を本当に感謝しているんだなぁ…大事にしないと罰が当たっちゃうよ?こんないい子、他にいない。
尽すし、美人だし、巨乳だしで言う事無い!!
「?また引き攣っていますけど?」
「い!いやいや!!なんでも無いから!!さて、先ずは捌く所からね!!」
この思考はヤバい!!もうちょっとで血涙が出そうになるこの感情はヤバい!!
なので強引にお料理の方に集中する事にした。
ソフィアさんが真剣に覗き込んでくるから、胸が当たっているが、絶対に気にしない。絶対に!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まだ宴会の途中なれど、夜風に当たりに庭に出る。
…数か月前はこんなに自由に出歩く事なんか出来なかった。遠出しても気付いたら家にいた。呪い…縛りのおかげで…
それが解けたのはキョウのおかげ。だから本当に感謝しているし、愛している。
だけど、それを成しとけたのは、解放してくれたのは、結果そうなっただけとはいえ、キョウが目標にしている北嶋 勇さん。
あのキョウがライバル視している人。世界的にも有名な水谷先生が自分より上と公言している人。
そう言えば、水谷先生とは以前一度お仕事をさせて貰った事があるな。
会いたかった。会ってお礼を言いたかった。だけどそれは有耶無耶になった。
いきなりキョウに喧嘩をしかけて来るんだもん。神殺しの魔狼、ロゥを仔犬の様に扱うんだもん。神崎さんに殴られて鼻血を凄く噴射させたんだもん。お礼より先に驚くよ。
「……でも、改めてお礼は言わなくっちゃね」
北嶋 勇さんのおかげでこうして遠い日本に来れて、こうしてお料理を教えて貰って、こうして夜風に当たりながら酔いを醒まさせられるのだから。
そして友達も出来たしね。
神崎 尚美さん。綺麗で可愛い人。だけど時々見せる引き攣り笑顔は何?悩みでもあるのだろうか?
もしそうなら言ってくれればいいのに。力になれるかどうか解らないけど、言って気が楽になる事もある筈だし。
――どうしたソフィア?酔い醒ましか?
ロゥが私を見付けて近寄ってくる。九尾狐と一緒に散歩に出た筈だが、一足先に帰って来たのか?
「そう。酔い醒まし。こんな経験した事無いから、回るのが早くて」
――そうか。俺も解放されてから久しいからな。自由に出歩けるのは
ロゥもなんだか嬉しそう。彼もあの地下空間で捕らわれていたからね。私よりも遙かに永い時間、自由なんて無かった。
「そう考えると、あなたも北嶋さんのおかげで自由になれたようなものよね?」
途端に渋い顔になる。そりゃそうだ。初見で自分の本質を見切られた上、仔犬の様に扱われたんだ。苦手意識にもなるだろう。
――そ、それはそうと、今日はこの家に泊まりなのか?時間も時間だし、宿も取っていないだろう?
解り易いほど解り易い。完全に話題逸らしだ。目が泳いでいるし。
「そうよ。神崎さんも泊まって行けと言ってくれたしね」
この『友達の家にお泊り』も私には未経験だから嬉しい。これからは出来なかった事が沢山出来るのが嬉しい。
――そうか。狐も海神も恐らく泊まっていくのだろうと言っていたが、その通りになったか
「海神…様…と言うと、キョウがちょっと言っていた、池にマグロを放した神様?」
ビショビショになって獲って来た魚介がいる池?あの話を聞いた時も凄いワクワクした。
――そうだ。お前も明日にでも見せて貰うがいい。あの池の奇跡を。そして話を聞かせて貰うがいい。あの男の無茶苦茶加減を
最後はやっぱり渋い顔になったけど、明日の楽しみが出来た!!
明日の楽しみも私にはあまり縁が無かったから、本当に楽しみだ。
「そうね。毎朝お掃除するみたいだから手伝って、ついでに見させて貰おう」
神崎さん曰く、北嶋さんはよくサボるそうだけど。
――キョウも連れて行け。奴にも働かせないと申し訳ない。これだけ良くして貰ったのだから
力強く頷く。明日は朝からいっぱい楽しみが出来た!!
その前に、今日の楽しみも満喫しなきゃ。
「さて、宴会に戻るかな。ロゥも来る?」
そう言って立ち上がる。ロゥは首を横に振る。
――俺はまだ外にいる。散歩の途中なんでな。狐ももうすぐ追いつくだろうし
ロゥにはロゥの楽しみがあるか。自分の楽しみを満喫する権利があるか。
「……やっぱり北嶋さんにお礼を言わなきゃね。お互いに」
――……………心の準備が出来てからだな……
噴き出してしまう。彼は多分私達を助けてくれた事を気にしていないと思うけど、寧ろ助けた覚えは無いんだろうけど、それはそれ。
「帰りまでに心の準備をしておきなさいよ?」
――……………努力する…
やはり噴き出してしまった。でも、まあ、いいか。努力はするみたいだしね。
若干冷えた身体を抱くように腕を回して家に入る。
今日の楽しみの続きをする為に。明日の楽しみを待ち侘びる為に。これからの楽しみを確信する為に……
北嶋勇の心霊事件簿7~獣の王~ しをおう @swoow
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