第2話

「な、何……っ?」

先の衝撃のみならずガギンゴギンと続いて響く轟音。

文字どおり何度も響いて、段々と近づいている気さえする。

不安を掻き立てられるがままに座席を立ち、辺りを見回しても何食わぬ様子で運動をし続ける列車内にその原因は見当たらない。ただ足下から耳に飛び込んできたゴトンと硬質な物が落ちた音に驚いただけ。

「ひゃっ……!」

喉が小さく鳴って心臓が飛び上がる。みるみるうちに激しく鐘を打ち鳴らして周囲への警戒を全身に呼びかけ、恐怖の感情を生み出していく。恐る恐る音のした方へ目を向けると、僅かな光を鈍く反射し金色に輝く個体__金の懐中時計__が黙って転がっていた。

「と、けい…………」

しゃがんで拾い上げてみると、壊れているのか針は12時を指す少し前、11時59分で止まっているらしい事がわかった。

「落としちゃったからかな……」

少女は可能性の一つを口にする。だがよく見ればその時計は見事な物で、キラキラと瞬いて幻想的で独特な雰囲気を纏っているそれに目を奪われてしまう。

ほー、はーなどと感嘆の声を漏らしぺたぺた触れて存在を確かめる。

そうして触っているうちに指紋がべとべとくっついてしまったので自分の着ている服で拭うと、滑らかな裏面の隅っこに細い凹凸がある事に気づく。

不思議に思いひっくり返して見てみると、"timy"とだけ文字が彫られていた。

「んー……?」

____なんのことだろうか。

さっぱり意味がわからず他にはないのかと時計を軽くノックしたり音はしないかと耳を澄ませてみたり傍目から見れば「何やってんのお前謎だわ」と言われかねない行動を約10秒間繰り返した。そして何も無いとわかると現在の状況も忘れて時計を眺め考え込む。

また光を反射させようと外に掲げた時、降りしきる雨の中に影かなにかが素早く動いたような気がして目を見張った。

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