春風や
猫がいた。三毛猫だ。塀の上に丸まっていた。時折前を通る人間を、眺めていた。首輪は無い。おそらく野良だろう。だがその割には、毛並みが良かった。
「
「まさか、こんな所にいるなんてね。」
妹の
——二人が東京に着いたのは正午過ぎ。今は飯田橋(東京都千代田区)に来ている。東京にいる
——その猫は
「とりあえず、こっちの
その猫の周りには球形の結界が張ってあった。形状・構造からして
「うん、まずは挨拶に行こう。妖に気付いてないはずないしね。」
目的地の神社に着く。鳥居を潜る。
社務所に行く。
「本家の方から伺っております。
「はい。」
「お上がりください。」
巫女装束を着た若い女は、二人を奥へと案内した。
奥の座敷には男が座っていた。
「今日は。お話は聞いています。……、赤い霧、ですか。この前に続き、また東京とは……。」
男は言う。話に聞いていた
「そうですね……、今回はその調査も兼ねて、家の方から行くように言われたんですよね。」
「そうですか。……これからすぐに学校に?」
「いえ、今日は
それから暫く他愛も無い世間話をしていた。すると、
〈何?
〈妖。〉
「どうかしました?」
男が不審そうに聞いてくる。
「ああ、いえ……、その、そこに妖らしきものがいたので、どうするのかと……?」
「ああ、はい。猫ですよね? 我々も今朝見つけたばかりで……、今は人も多いので、一先ず結界だけかけています。
男は頭をかいた。
「そうですか。ではそちらの方はお任せします。ああ、じゃあ、そろそろ。」
「はは、もっとゆっくりしても良いんですよ。」
「お気遣いなく。……そうそう、これ、父からです。」
「おや、
男はそれを丁寧に受け取った。中身は知らないが、どうせ呪物の類いだろう。
────────
改札を出て、階段を降りて、駅の北口に出る。バスターミナルの先に商店街があった。
「蔵里神社で良いんだよね?」
「親父はそう言ってた。」
商店街を通り過ぎたら、車の往来が激しい道路がある。そこの横断歩道を渡って左へ曲がるれば、すぐに目的地であった。
「ここ……、だよな?」
「地図ではね。」
「——裏から行けって言われてたよね?」
「そうだったな。一周、歩いてみるか。」
ガラガラと木戸が開かれる。出てきたのは女性だった。
「
女性はさらりと言った。
「ん?」
「大丈夫よ。酔い潰れてるだけだから。ここの神主、いっつも酒、酒、酒で困っちゃうわ。そうそう、荷物はさっき届いたわ。ついでに言っておくと、私は
その女性はそう続けた。
馬鹿神主呼ばわりするあの人も中々だが、昼間っから酔いつぶれてて良いのか? 神職。
空ノ空 ——the vacant sky アンノウン芋 @UnknownImo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。空ノ空 ——the vacant skyの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます