不滅の神様

@koko929

神様になるちょっと前

-1

4月6日 (火)


 今日で19歳。もう1年待てば成人かもしれないし、待たなくても成人年齢が18歳になればもう成人という微妙な立場。

 でも彼には政治など関係ないのだ。

 神路達也。彼は神様だから。



「ばか…」


「ばっ…?」


 小豆色の髪の毛をふわりと揺らして振り向く彼女の手には、魔法書のような重苦しい見た目の僕の日記。神日記と称されている。

 今日は神日記活動初日だから、幼馴染みの杏に見てもらいたかったのだが__ 


「全否定っすか…」


 少し位賛成してくれても…と項垂れるが、バッサリ切り捨てるstyleの杏は「うん」と悪気無く言った。

 ゴス、と鈍い音を立てて僕は崩れ落ちる。


「なんかキモい」


「ひどぉ…」


 澄まし顔でいう辺り、本人は傷つけている心当たりは無いんだろう。悪い意味で天然だ、くせぅ。

 むくりと起きあがり、杏の手から神日記を取る。


「どこら辺が駄目か教えて、出来れば具体的に」


「全部は」


「駄目」


 全部と言いたかったのか、杏はむぅ…と黙ってしまった。

 冷静沈着…というか無口で根暗(そういうと怒る)の杏は、目に光が宿らない。神になれるというのに何故そんな協力的じゃないのか…と不思議になる。

 と、杏がパッと顔を上げた。


「根本…神になりたいって考えが既に」


「帰っていいよ」


 杏は「本当なのに…」と首を傾げてから、紺色のスカートに付いた埃を払ってから立ち上がった。

 「じゃ」とも何とも言わず、いそいそとドアから出てく。


「お母さん…お邪魔しました…」


「えー、杏ちゃんもう行っちゃうの?!」


 本当読めねぇ奴。






 まぁ取り合えず、俺は神になるのだ。

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