魚のぞきの窓

作者 夏村響

12

4人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

設定のひとつひとつに深みがあり、世界の奥行を感じます。昔話のようなタッチで書かれていて、説明調の台詞が多いのですが不自然さはありません。それどころか、登場人物の人となりが次第に見えてきて、次第に心が引き込まれていきます。
この物語で語られる一つの伝承、その哀しさと美しさを是非ご覧ください。

★★★ Excellent!!!

旅の女剣士アルコ・イリスが興味を惹かれたのは、
日がな一日、城の一角から堀をみつめる美しい青年。
彼は何者かと人に問えば、「魚のぞき」だという。
先祖代々、堀の主たる怪魚を観測するのが務めなのだ。

端正な文章で綴られる長編冒険小説の一節、のよう。
美しくも風変わりな白い城の景観や呪術の存在、
アルコの大太刀が討った敵や彼女の旅の履歴など、
奥行きのある世界観がうかがえて、もっと読みたい。

城の一室から出ることのない魚のぞきの青年リュと、
まるで正反対の生き方をする旅人アルコは語り合う。
運命と自由、安定と孤高、互いに相反する2人の間に、
やがて静かな雨が降る。その幕引きがとても美しい。

★★★ Excellent!!!

旅の女剣士アルコ・イリスが、立ち寄った国で見かけた青年。
代々、城のバルコニーから堀の魚を見つめる仕事の一族なのだという。

本作品の魅力は何と言っても、『魚のぞき』という特殊な身分。
命尽きる日まで魚を見つめ、その死後は、子や孫が継ぐ。
彼らの運命は、外部の者から見れば、理不尽です。
しかし、それを心の安定として必要とする者も、確かにいるのでしょう。

アルコの背景がしっかりしており、もしかしたらシリーズ中の一作なのかも、と感じました。
そうでないとしても、彼女が旅の途中で出会う、別のエピソードも読んでみたいと思わせます。