???

 ――自分を偽り続けても、何の利益もありはしない。僕はその事実を受け入れなくてはならない。それがどれほど、受け入れがたい悲劇であっても。



 一気に冷え込んだ寒空に、身を震わせる。予報どおり、空から白の手向けが降り注ぐ。


「綺麗だな……」


 呟いたのと同時に、僕の携帯が着信音を鳴らす。時間ぴったりだ。よく出来た子だ。


「もしもし」


 スピーカーから、彼女の声が聞こえる。うん、うん、と何度か返事をする。


「今、マンションの下にいるよ」


 通話を切って、空を見上げる。午前九時。社会人はとっくに家を出ており、学生もまた学校に行った後。休日の者なら、まだ寝ているかもしれない。なるほど、今は宙ぶらりんの時間なのだな、と気づく。



 僕に与えられた時間は、せいぜい三十分といったところだろう。それもごく限られた行動範囲しか許されていない。こういう時ばかりは、一族のコネクションや財力に感謝せざるを得ない。

 そのおかげで、僕はこうしてマンションの下で堂々と待ち合わせが出来ているのだから。



 そろそろ、「彼女」が着く頃だろう。この日記――半ば記録に近いけれど、そろそろ終わりが近い。



 全ては、六日目の朝にある。それが全てだった。

 全ての終わりを始める、巨大な引き金が引かれた日だった。

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