第17回 座右の銘(好きな言葉)

 ユズ(以下、ユ):みなさんの座右の銘は何ですか?

 レモン(以下、レ):突然だな・・・特にないな。

 ミカン(以下、ミ):「座右の銘」って言葉は聞くけど、そもそもどういう意味だっけ?


 ユ:「常に自分の心に留めておいて、戒めや励ましとする言葉」です。「座右」が自分のそば、「銘」が刻みつけた文字や文章のことです。

 ミ:自分が大切にしている言葉ってことでいいんだよね。

 ユ:はい。

 ミ:好きな言葉はいくつかあるけど・・・、コレって選ぶのは難しいなあ。


 レ:座右の銘があることは大いにいいが、ないとダメなのか?

 ユ:なくてもいいです。しかし、実際には「なし」って答えるのが難しい雰囲気はありますよね。子今回は座右の銘とは何か、考えていきましょう。



1.座右の銘は、なぜ聞かれる


 ユ:学校関係で「座右の銘」が使われる場面は主に4つです。

1.自己紹介で言う、書く

2.先生が自分の座右の銘を言う

3.国語とか授業で自分の座右の銘を発表する(めあては自分の生き方を考える等)

4.入試など面接で問われる


 レ:まあ相手が勝手に言ってくる分には構わないんだが、発表とか困るんだよな。

 ミ:書道で書いて、しばらく教室の後ろに貼られるっていう場合もあるね。


 レ:自己紹介する時に使ったり、みんなそんなに知りたいのか?

 ミ:うーん、座右の銘が好きな言葉なら、好きな食べ物を聞くくらいの感覚で聞いてるんじゃない?

 レ:いや、そんな簡単じゃないかもしれないぞ。私も、授業で座右の銘だったか好きな言葉だったか発表する機会があって、クラスのある人が「出る杭は打たれる」だって発表したのな。日頃のふるまいと照らし合わせて、すごい嫌悪感を覚えた。

 ミ:「出過ぎた杭は打たれない」とか逆手にとった言葉ならポジティブだけど、打つ方なの?

 レ:ああ。そいつの真意は分からんとしても、座右の銘って少なからず「人格」とか「人となり」みたいなものをどうしても考えさせるものだと思う。

 ミ:その人の「信念」とか「考え方」、「生き方」を表しているって思うもんね。

 レ:面接とかで聞かれるのも、そういうのが測られているのかもな・・・。


 ユ:さっきのケースは、ネガティブな発言でも自由にできる環境だったとも言えますね。

 レ:そういう捉え方もあるか。

 ミ:ネガティブでもそれが自分の信念なら、否定されるとつらいからね。

 ユ:ただ、言いっぱなしでなく、その後個別にでもケアがなされるかは大事かもしれません。その言葉に対して、理由をもって「その考え方はプラスにはならないと思う」ということも時には必要でしょう。

 ミ:人の価値観だから、難しいね。ゴリ押しはできないけど、人を傷つけるような価値観なら改めるきっかけになる指摘は大切だと思う。

 レ:座右の銘は人の考えがにじみ出るものと考えると、授業などで扱う際は、気安くではいけないな。


 ユ:座右の銘が与える印象の力は少なからずあることを話してきましたが、実際言わなきゃしょうがないから5秒で考えたってこともありますよね。

 レ:あるある。

 ユ:その辺りを考えていきましょう。



2.座右の銘いろいろ


 ユ:頭軽くして、よくある座右の銘を挙げてみましょう。

 レ:よくあるやつか…、努力・本気・元気・笑顔・友情・行動・感謝・夢とか。

 ミ:四字熟語もよく使われるよね。日々精進・一期一会・有言実行・文武両道とかかな。

 レ:頻出の慣用句もあるな。千里の道も一歩から・初心忘るべからず、とか。


 ユ:どうですか。

 レ:模範解答って感じがする。平凡だからダメってことはないけど。

 ミ:確かにこういうこと言っておけば無難だな感はあるけど、これはこれでいいんじゃないの。

 ユ:さっき言ったように価値観に関わることです。否定されたくはありません。評価される価値観に合わせることは、安全を得るための適応反応とも言えます。


 レ:それでシンプルで分かりやすい言葉、良く使われる言葉が好まれるわけだな。

 ユ:難しい言葉は説明が要りますからね。

 ミ:意味わかんないって言われたら悲しいもんね。

 ユ:そこがポイントです。仮に説明がうまくできなくても、四字熟語や故事成語ならそれっぽいです。偉人の言葉なら、何となく権威がつきます。例えば、ああよくわからないけどエジソンが言った言葉なら深いだろう、と勝手に思ってくれるわけです。


 レ:そういう意味で、過去の言葉を使うのは便利なわけだな。

 ミ:逆に言うと、便利なだけで必然性はないんだよね。

 ユ:はい。出典はどこでもいいですし、オリジナルの言葉でも全く構いません。どこの誰の言葉だろうと、それが自分のそばに置きたい言葉なら座右の銘になります。




3.無理やりつくるものでもない


 レ:座右の銘ってどう決めればいいんだ?

 ユ:単純に、好きな言葉、感覚的にいいなって思った言葉でいいと思います。信念ってほど深くなくても。

 ミ:好きな言葉が何個もある場合は?

 ユ:何個もあっていいと思いますよ。1個しか言えない状況なら、1個代表的なものはどれか考えていてもいいかもしれませんね。何個も語れるなら、毎回違うこと言ってもいいでしょうね。

 ミ:やはり、なぜ好きか自分で説明できることが大事か?

 ユ:私は「なんとなく」っていうのも大切な感覚だと思いますけどね。ただ、説明が求められれば後付けでも出来ればいいでしょう。


 レ:うーん、自分を支える屋台骨になる言葉と考えると、「座右の銘」はあった方がいいのか?

 ユ:別になくてもいいんじゃないですか。結局、これさえあればって万能な言葉はありませんし。

 ミ:大切にしたい言葉が自然に出来たら、それを使えばいいって感じかな。

 ユ:そうですね。「座右の銘探し」は色々な言葉を見る機会にはなりますが、特に名言一覧とか見ても表面的な部分しか見ないことになりがちなので、その言葉が自分が苦しい時に自分を支えるかと言われると。



4.おわりに


 レ:無理やり引っ張ってきてもあんまり意味ないってことだな。

 ユ:そうですね。きれいな言葉に、理由まできれいなエピソードを求める人もいるかもしれませんが、ないものはないということです。ただ、考えること自体に意味がないとは言いません。自分の行動を見つめ直すことができますから。

 ミ:まあ、座右の銘を言うって結構難しい、ってことは理解しておきたいね。



 ユ:それでは、ここまでお付き合いありがとうございました。

 レ:次回もぜひご覧ください。

 ミ:またね!あ、今回はおまけもあるよ!



★おまけ


 ミ:そういえば、ユズの座右の銘は?

 ユ:私の座右の銘は「他人に期待するな、期待に応えられるのは自分だけ」です。

 レ:ドライだな。

 ユ:いや、他人を信頼するなという意味ではありません。信頼は大切です。ですが、「自分がやらなくてもあの人が自分を助けてくれるだろう」という発想はダメです。例えば、創作でも、自分が書かなきゃ自分が望む作品は生まれません。

 ミ:でも、他の人の作品も見るよね?

 ユ:はい。しかし、それは自分が期待した通りのものではありません。自分が想像もつかなかったこと、実現できるなんて思ってなかったことだから、むしろ自分の期待をいい意味で裏切ってくれるものだから心揺さぶられるのです。

 レ:なるほど。

 ユ:逆に、好きな作品がちょっと自分の好みの展開と違ったら、これはおかしいと苦情をつける、これは他人に過度に期待してしまっているからです。もちろん、その感情は多くの人が抱く妥当な気持ちであることもあります。しかし、自分にとって損です。自分が作ったからといって100%思い通りではありませんが、それでも自分の理想は自分しか知りませんから、一番近づけるのは自分です。

 レ:そういう考え方か。

 ユ:もちろん創作だけでなく、いろんなことに通じる考え方だと私は思っています。この考えが「正しい」かはわかりません。ですが、「私がやらなきゃ」と私の行動を促してくれる考え方であり、私にとって有用です。

 ミ:自分にとって有用、それが座右の銘というに一番大事なことなのかな。



 レ:そういやミカン、好きな言葉がいくつかあるって言ったけど、例えば?

 ミ:そうだなー、1ついうと、ゲームのセリフなんだけど「鳥はただ、自分が飛びたいから空を飛ぶんだ」は好きだな。

 レ:ほう、どういう意味だ?

 ミ:理由とか役割とか使命とか、そんなのじゃなくて自由な意志で動くんだってことなんだけどね。これ主人公がラスボス戦でいうセリフなんだけど、これは作品を通じた大きなテーマなの。ラスボスが発する問い「なぜ鳥は空を飛ぶのだと思う?」、ラスボスの信念は「鳥は飛ばなければならない。強き翼をもつゆえに」。だから、人の欲や業にまみれた穢れた世界を救うには人々から意思を奪わなければならない、自分はその力を持つから全てを捨ててその使命を果たさないといけないと考えた。主人公たちが冒険の末、絶望も乗り越えその結論と真逆の結論にたどり着くわけ。そもそも・・・

 レ:・・・。

 ユ:・・・。

 ミ:あー、うまく説明できてるかな。これ、プレイ時間何十時間の末にたどり着いた上のセリフだからグッとくるわけで、出来れば実際に一からプレイして感じていただきたいんだけど。なんかごめんね。

 レ:いや、構わんが。語りたい気持ちはわかるが、なぜ好きかを言うって難しいな。

 ユ:そうですね。言葉の深みや背景を100%伝えることは難しいですから、それよりもどう今の自分を支えているか、が言いやすいかもしれませんね。

 ミ:そうだね、ユズのように創作にしても何にしても、どうしても「しなければならない」って自分を追いつめる時はあると思うんだ。「自分がしたい」で始めたこともいつのまにかそうなっちゃう。責任を放棄しろって意味じゃないけど、でも、「自分がしたい」この気持ちを忘れたらパフォーマンスも上がらないし、なんたって幸せじゃないからね。

 レ:なるほど。いい言葉だな。

 ユ:そうですね。

 ミ:なんかうれしい。

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