第14回 掃除の時間

 ユズ(以下、ユ):今回は「掃除の時間」についてです。多くの学校で清掃する時間があると思いますが、みなさんは掃除の時間を好きでしたか。

 ミカン(以下、ミ):きれいにするのはそれなりに達成感あって嫌いじゃないけど、好きってほどじゃなかったかな。

 レモン(以下、レ):掃除自体は嫌いじゃないが、遊ぶ人がいるとめんどうだった。担当場所くらい1人でやった方が早い。

 ユ:ごく日常的に行われている掃除ですが、いろいろ思う所がある人もいるのではないでしょうか。考えていきましょう。



1.掃除の時間もいろいろ


 ユ:多くの学校でほとんど毎日子どもによる掃除は行われます。学校での掃除に関する調査(※)を見ると面白いですよ。

 ミ:小学生は昼ごはんのすぐ後か昼休み後、中学生は放課後に行われることが多いんだね。

 レ:やっぱり小学生だと飯でよごれるからかな。

 ミ:時間は15分か10分が多いね。

 ユ:教室や廊下はほとんどの学校で掃除しますが、グラウンドなど外はやるところやらないところ半々といった具合ですね。

 レ:外は移動が面倒だし、きれいになった感もあまりしなくて好きじゃなかったこな。

※「児童・生徒からみた学校掃除に関する実態調査」2011年 株式会社ダスキン

 

 ミ:学校の掃除といえば、ほうきとぞうきんがけのイメージ。

 レ:小学校の時、床板がボロボロでぞうきんが木くずだらけになった。ささると痛い。

 ユ:危険ですから、そういう場合はぞうきんがけさせるのはよくないでしょうね。



2.遊んでしまう?掃除の時間


 ユ:机を動かしてどったんばったんおおさわぎ、廊下を雑巾がけでダッシュ、トイレでホースで水を散乱させる、ほうきをバットにして野球など、掃除時間のイメージも人それぞれあるでしょう。

 ミ:ほうきを指一本で長く持った人の勝ち、なんてやったなあ。

 レ:遊ぶこと自体は構わんが、ジャマになるのはマジでやめていただきたい。やりたいなら、さっさと終わらせてからにしてくれ。

 ミ:ごもっともです、ごめんなさい。・・・一応、ちゃんと掃除もしてたよ。

 レ:まあやってる側からすればジャマにならなければいいんだが。ひどいクラスだと、みんな掃除場所にすらこないから逆に掃除がはかどることもあったな。場所にいるだけいて騒がれるのは一番タチ悪い。


 ユ:なぜ、遊んでしまうんでしょうか。

 ミ:掃除用具というおもちゃになるものがたくさんあるから、かな。

 レ:それもあるだろうな。ただ、ほうきだけ持って突っ立て喋っているだけの人たちもいる。

 ミ:誰かがやってくれるという他人任せなところがあるのかな。押し付けられる人がいなければやるのかも。

 レ:これがな、そういう人たちだけ集めると案外誰もやらなかったりする・・・きれいにするという成果じゃなくて時間さえ過ぎれば終わりって意識があるように思う。


 ユ:掃除自体が嫌って人と、別に掃除は嫌じゃないけど積極的にする意味ないからめんどうでやらないって人がいるでしょうね。

 ミ:掃除自体が嫌いって人は、汚いのが嫌とかそういうことなのかな。

 レ:汚いからきれいにするんだろう、と思うのだが。まあ、溝のヘドロとかは嫌なのはわかるけど。

 ミ:放置すればどんどんよごれはひどくなるからね。


 ユ:めんどうな人はどうでしょう。

 ミ:汚いのが平気って人はいるよね。

 レ:見た目の感じ方はそれぞれだが、保健衛生上よくないからな。

 ユ:ほこりだらけゴミだらけだと健康に害をおよぼす恐れもあります。

 ミ:学校の掃除は好きでも嫌いでもないって人が多いみたいだね。

 レ:まあ、好きじゃなくても必要なことだからやる、って意識でいいんじゃないか。



3.掃除に付け加えられる教育的意味


 レ:きれいにするという掃除の意味はわかるんだが、やたらと精神的な意味を強調する場合があるように思う。

 ミ:どういうこと?

 レ:私の学校で、無言で掃除するという時期があって、掃除したくない時は端に座って静かに「なぜ掃除したくないか考える」とか、ちりとりが必要なタイミングなどを仲間と「あうんの呼吸」で言葉を交わさずとも理解するとかあって・・・。私の学校じゃ全然広まらなくて、1年で終わったんだけど。

 ユ:そういった取り組みで成功した学校をまねする学校は少なからずありますね。一応、今必要なものや人が困っていることに「気づく力」を養うという意図、のもとやってたりします。

 ミ:う~ん。・・・ちゃんと言葉で伝えればいいじゃん。

 ユ:要求することも大事な力ですからね。

 レ:黙るという形式はすごい徹底されるから騒ぎはしなくなるんだけど・・・体感として正直、気づきとか別になかった気がする。


 ユ:掃除の時間の教育的意味として言われるのは、以下のような点でしょうか。


○物や空間をきれいにする能力

○日頃から物や空間をよごさない、きれいにつかう意識(公共物含む)

○集団・他人との協調性

○作業を段取りよく行う・工夫する力

○心もきれいに


 レ:きれいにする能力、すなわち掃除スキルはわかる。

 ミ:でも、だったら教室でも掃除機使えばいいのに。実践的だよ。・・・お金の面を考えなければ。

 レ:気持ちはわかるが、家でもほうき使う時はあるぞ。

ベランダまで掃除機持ち出さないし、室内でも細かいゴミなら一々掃除機持ち出すよりほうきとちりとりの方が早い時は結構ある。・・・まあ、子どもが使ってしょっちゅう掃除機壊してたらやってられんわな。

 ミ:長い直線を走って雑巾がけするかはともかくとして、雑巾も使うもんね。

 レ:床全体はクイックルワイパーみたいなシートかもしれんが、局所的によごれがひどい時はあるからな。


 ミ:よごさない意識っていうのもわかるな。掃除できれいにする大変さは知ることができるからね。

 レ:ちゃんと伝えないと、勝手には自覚できないかもしれないな。


 ユ:集団・他人との協調性はどうですか。

 レ:淡々と粛々と掃除をすればいい。じゃまはしないでくれ。・・・でいいと思う。

 ミ:う~ん。協力することで一人では生まれないものを作り出す、とかいうタイプのものじゃないからね。あまり人との連携を前面に押し出すものでもないのかなと思う。

 レ:集団生活の出来事なんて、全部協調性を育てるって言えてしまうからな。


 ユ:作業を段取りよく行う・工夫する力、掃除の時間で育ちますか?

 レ:むしろ、先生ごとのよくわからんローカルルールに縛られて、工夫なんてできない気がする。

 ミ:机の移動の仕方だの、雑巾を洗うバケツの水は掃除時間中変えてはいけないだの、結局決まりごとを守ることが大事って感じだもんね。

 レ:外周りの掃除の時、上ぐつか外ぐつか先生によって考えが分かれてて、担任の先生が上ぐつっていてたのに他の先生に外ぐつって怒られたことがあったな。ルール守らせるなら統一くらいしとけよって思った。

 ユ:はっきりルールを言われたわけでもないけど、よくわからん2つのルールがあって必ずどちらかから叱られる、そんなダブルスタンダードは一番困りますよね。


 ユ:きれいにすることよりも「掃除の時間のルールを守ること」に神経をとがらせる時間になっている恐れもありますね。

 ミ:効率的に掃除するためにある程度の形を決めるのはいいんだけど、あくまでその形は「きれいにするため」でないとね。

 レ:掃除の効率をさげる形式ならなくさないといけないな。

 ミ:「きれいにするため」に掃除できれば、自然と工夫は生まれるかもね。

 レ:掃除だし別に、いつものことをいつものようにやる、で十分だけどな。

 ミ:変に要求を増やしてもね。


 レ:心をきれいには「部屋の乱れは、心の乱れ」ですか・・・よく言われるけど・・・。

 ユ:あながち大間違いでもないんですけどね。実際、精神的に余裕がない時は自分の部屋の掃除は怠りがちになるので、個人の精神衛生上は掃除って結構大事だったりします。

 ミ:かといって「部屋が汚い=病んでる」ではないだろうけどね。

 ユ:そうですね。あくまで、心が沈んでいる時、掃除が自分の心を明るくする手段の1つだということです。ただ、学校の清掃活動と直結するか、学校の掃除は心をきれいにするかといわれると・・・いいすぎでしょうね。

 レ:実際、学校の掃除はそうでもなくても、自室の掃除は嫌いって人はまあまあいるんだな。

 ユ:学校の清掃活動は1つのきっかけにして、身の回りをきれいにすることを習慣づけることが大切かもしれません。

 ミ:その時に、気持ちが沈んでいる時は掃除を忘れがちだよ、掃除をすることですっきりすることもあるよ、くらいは言えそうだね。



4.掃除は強制労働?罰?


 ユ:子どもが学校の掃除をすることは世界では必ずしもあたりまえではなく、本を参考に学校掃除を取り入れる諸外国の学校もあります。

 ミ:へー。

 ユ:逆に、子どもに掃除させるのはおかしい、強制労働だという意見もあります。確かに、会社で掃除させれば、それは労働時間になります。

 ミ:うーん。掃除しないことで罰を与えたり、あまりに酷使するのはいけないと思うけど・・・、体や心にダメージを与えることじゃないし、勉強の妨げにもならないし。

 レ:ぶっちゃけ効率だけ考えたら、費用の問題だけ考えたとしても、小学校なら1年生に掃除なんかさせずに5・6年生に掃除させればいいしな。

 ミ:先生も掃除に参加することが多いし、掃除も一つの学ぶ場だからね

 レ:ただ、いくら教育的意味があるといっても、掃除は労働であるという側面は忘れてはダメかもな。

 ユ:「掃除は清掃員がするものだ」って子どもが平気でごみを捨てるのが日常という学校もあるようですので、それを思うと子どもが掃除をすることの意義はあるのかもしれません。


 ユ:ただ、掃除をつらいこと・苦しいことみたいに扱っている場面もあります。宿題やってこないや問題行動を起こしたなどで、罰掃除をやらせることです。

 ミ:確かに。掃除を罰にしちゃうと、掃除はやりたくないことになるね。

 レ:もし罰がなかったら、そこはよごれたままだったのか?それとも、きれいなところを形式だけムダに掃除させるのか?

 ミ:それこそ強制労働ってなっちゃうね。

 ユ:罰を与えること自体の有効性についても疑問は尽きませんが、少なくとも掃除の意識を習慣づけることとは相反します。



5.おわりに


 ミ:ただ、教育的意味がある程度あるとして、毎日やる必要あるのかな?

 レ:何だかんだいってやっぱり一番の目的は、物理的にきれいにし衛生環境を保つことだと思う。ごみもすぐいっぱい落ちるから、なるべく毎日掃除するのがいいだろう。

 ユ:よい環境で学べることが保障されることは大事ですね。


 ミ:掃除をすれば心がきれいにを押し付けてはいけないけど、掃除をすれば部屋はきれいになるよね。

 レ:理不尽なルールや精神論が付与されると掃除の時間が負担になってくる。淡々ときれいにする、でいいと思う。

 ユ:掃除を罰にしてしまっては、日頃からきれいにしようなんて思いません。掃除を罰扱いするのはやめてほしいです。


 ユ:それでは、ここまでお付き合いありがとうございました。

 レ:次もぜひご覧ください。

 ミ:またね!

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