第8回 じゃんけん・多い勝ち

 ユズ(以下、ユ):今回のテーマは「じゃんけん」です。学校では様々な場面でじゃんけんする機会があると思います。

 レモン(以下、レ):欠席者の分の給食を得るためだったり、当番を決めるためだったり、発表の順を決めたり。

 ミカン(以下、ミ):じゃんけんって、グーチョキパーのやつだよね。何も考えることなんてないと思うけど。

 ユ:いえいえ。一口にじゃんけんといっても、いろんな文化やローカルルールがあります。じゃんけんについて.学校でもめたことだってあるんじゃないでしょうか。

 レ:そうだな。純粋なじゃんけんじゃなくても、2手に分かれるためのグーパーとかいろいろある。

 ユ:あたりまえと思っていたルールは、実はその学校だけの文化かもしれません。考えていきましょう。



~1.派生じゃんけんいろいろ~


 レ:さて、私はさっきグーパーと言ったな。

 ミ:うん。私は「グッパー、ほい」ってやってたけど。

 レ:そもそも、私の学校は「グーチョー」だった。

 ミ:グーとチョキなの?チョキって出しづらくない?

 レ:そんなこと言われても、そうだったものはそうだったとしか言えないが。

 ユ:そうですね。こうゆうルールは子どもたちが気ままに決めたルールが自然と広がっていくものです。そこに完璧な合理性はありません。

 ミ:掛け声も違ったりするよね。「グーとパーでわかれましょ」とか。

 ユ:2手に分かれる方法には「うらおもて」っていうのもありますよ。手のひらと手の甲を出した方に分かれるものです。

 ミ:もはやじゃんけんですらない。

 レ:それぞれの生活圏で自然発生したものだから、どれが正しいとか悪いとかいうこともないけどな。



~2.理不尽で不合理な「多い勝ち」~


 ユ:他にも「おおいがち」なんてのもありますね。

 ミ:私は知らないんだけど、どんなの?

 ユ:大人数でやって、グーチョキパーで一番多数派の手を出した人達の勝ちです。


例)グー6人、チョキ2人、パー2人ならグーを出した6人の勝ち


 レ:主に人数が多すぎて、じゃんけんだとずっとあいこになるような人数の時にやるんだが…。

 ミ:多数派の勝ちだから、あんまり人数減らないよね。

 ユ:使われ方は主に2つです。例えば余ったプリン1個を10人で争う時、じゃんけんの前の予選会的に使います。

 ミ:人数を絞るんだね。

 ユ:もう1つは、負けの人数が少ないことを利用します。例えば、10人でおにごっこをする時に1人のおにを決めるとき使います。上の例なら一気に4人に絞れます。

 ミ:負け残り式だと早いんだね。

 レ:まあ早いんだが…。

 ユ:「多い勝ち」でよく起こる問題は、不文律とローカルルールです。

 レ:不文律は、例えば「おおいがちホイ」って出すと十中八九みんなパーを出す、それが決まってるんだ。

 ミ:なんで?

 レ:みんな多い勝ちで負けたくないから、とりあえずパーを出しておけば負け回避できるって暗黙の前提にしようっていう文化ができあがる。子どもたちの間の知恵だな。

 ミ:定石をつくっておくのね。でも、それだと勝負が決まらなくない?

 ユ:そこで、ひっかけをするわけです。これがローカルルールです。例えば「パー無しおおいがち」って言ったらパー出した奴は反則負けになります。

 レ:これもパターン化されるから、多数派の人は「パー無し」ならグーだって反応できるんだけど、これにとっさについていけない、悪い言い方だと「どんくさいやつ」が負ける。負ける人が決まってきたりしちゃうわけだ。

 ミ:もう全然、運の勝負じゃないね。

 ユ:これ、ルールとしても理不尽なんですが、負けた人はイコール「ミスをした人」になっちゃうので、負けた側は余計にバツが悪いんですよね。


 ミ:どうしてこんな感じになっちゃうんだろう。

 ユ:人間、自分が不利益を受けたくはないですからね。ついていけない人が毎回負けるルールをつくってしまえば、自分は負けませんから。

 レ:無自覚でもそういうルールをつくっちゃうのかもな。



~3.じゃんけんは学校文化?~


 レ:じゃんけんとかの文化の「あたりまえ」の違いって、よく地域性とかいわれるんだけど、同じ地域ならあたりまえって考えると意外と違ったりするぞ。

 ミ:そうなの?

 レ:高校で、掃除担当を決めるのに8人で多い勝ちをした。すると、私の出身中学の人は全員グーを出したんだが、市内の他中学の出身者たちは別の手を出していた。私の出身中学の人が多数派だったから勝ったんだが、多い勝ちがよもや一発で綺麗に決まると思ってなかった私の出身中学の人は皆驚いた。

 ミ:出身中の人はみんな、多い勝ちはまずグーを出すものと思ってたんだね。

 レ:話をしてみると、どうやら「多い勝ちはグーを出す」という「常識」は私の出身小学校の人たちの間のだけで通用するものだったらしい。それが中学にも受け継がれていた。

 ミ:都道府県どころか、同じ市町村内でも違うんだね。

 ユ:こういう文化は子どもたちの間でルールが変わっていくものです。だから、もしかすると学年が違えばルールも違うかもしれませんね。


 ミ:こういうの、いろんな地域の人たちと交流すると面倒だよね。

 レ:トランプの大富豪と同じ「ローカルルール多すぎて確認が絶対必要問題」だな。

 ユ:事前に確認するのも大事ですし、ルールがかみ合わなくてもそういうこともあるのだと納得して、イライラせずにルールを合わせていきましょう。

 レ:もっともシンプルな解決法は、よりシンプルでスタンダードな方法を用いることだろうな。

 ミ:じゃんけんなら・・・じゃんけんかな。

 レ:かな。

 ユ:人数が多ければ、適当に人数を分割するとかすればいいですからね。

 ミ:でも小学生の頃は、何かと色々とルールを付けたがるものだよね。

 レ:面白くしようという工夫なのかもしれないが…。結局よくわからなくなる。



~おわりに~


 ユ:あとだしとか、負けたのが嫌で「お前あとだしだろう」とか言うのはもってのほかですが、当たり前にやっているじゃんけん系が実は誰かをおとしめているかもしれません。

 レ:ローカルルールは他では通用しないかもしれないし、そもそもあまりごちゃごちゃルールをつけても面倒なことになる。とはいえ、ルールは自然にその子ども社会に根付いているから、その社会に適応するためには合わせざる負えないのもわかるが。

 ミ:多い勝ちにしても「パー無し」とか主導する人がいるし、そもそも多い勝ちにしようぜってその場をしきる人がいるわけだよね。そういう立場になった時、せこいことをしないよう気を付けることが必要なのかな。


 ユ:それではここまでお付き合いいただきありがとうございました。

 レ:次もぜひご覧ください。

 ミ:またね!

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