第3回 いじり
ユズ(以下、ユ):ようこそ「学校って意味不明」へ。
今回のテーマは「いじり」です。
ミカン(以下、ミ):「なんでオレがしなきゃいけないんだよ」
「いいよ、私がやるよ」
「いや、うちがやるよ」
「僕がやるよ」
「わしがやる」
「じゃあ、…オレもやるよ」
「「「「どうぞどうぞ」」」」
芸人の真似事だけど、これ一般人でもよく見る気がする。
レモン(以下、レ):こういう集団、本当に苦手だ。
~①いじりって何だ~
ユ:いじりって何か考える上で、まずどんないじりがあるか考えてみましょう。
ミ:体型とか顔とか外見のこと。汚い言葉だと「デブ、ガリ、ブス、ハゲ」とか。
レ:外見だと服装とか持ち物のセンスもかな。
ミ:名前とかあだ名。
レ:もっとエグイと家族とか、…個人情報ってバカにされる対象なんだな。
ユ:残念なことにそうですね。出身地とかへの差別は昔から大きな問題です。
レ:失敗したこと。忘れ物、寝坊、体育での大失敗、授業での珍回答。
ミ:「おまえら付き合っちゃえよー。」って勝手に恋愛関係に結びつけるいじり。
ユ:中高生だとそういうのとか、あとやたらと人をドMとか決めつけたがる人もいますね。
レ:マゾ認定されたら、首つかまれたり服脱がされたり身体へ攻撃がくる。
ミ:あと辱め(はずかしめ)系ね。最初の「どうぞどうぞ」とか、自分が喋る時だけシーンとなるとか。
レ:モノマネとかムチャぶりもあるな。
ユ:ここまで「いじり」の種類をあげてみてどうでしょう?
レ:やられる方は理不尽。
ミ:・・・まあ、いわゆる「いじめ」だよね。
レ:そもそも「いじり」ってどういう意味だ?
ユ:ここで言葉を辞書で引いてみましょう。
いじる(弄る)出典:デジタル大辞泉
1 指先や手で触ったりなでたりする。「ネクタイを弄る」
2 物事を少し変えたり、動かしたりする。「編成を弄る」
3 趣味として楽しむために、あれこれと手を加えたり、操作したりする。仕事など を趣味のように扱っていう場合もある。「盆栽を弄る」「会社では、毎日パソコンを弄っています」
4 おもしろ半分に、いじめたり、からかったりする。「先輩が新入社員を弄って楽しむ」
ユ:今回の「いじり」は4の意味ですね。
ミ:やっぱりいじめじゃないか。
レ:「いじめ」かどうかを置いたとしても、人の弱みや恥をさらして笑おうとしているのだから、不快だな。
ユ:しかし、現実問題として「いじり」は「笑い」として広く認識されている面があると思いませんか?
ミ:いじる側は楽しいと思ってやってるもんね。
レ:いじられた側がつらいとは限らない。だからといって、当然つらいこともあるし、いじることがいいとは思えないが。
ユ:その辺りを考えていきます。
~②みんな楽しいいじりはあるか~
ユ:さて、「いじっていれば楽しい」と考える人には、「周りが明るくなれば」「相手が笑っていれば」いじりはOKだと考える人がいます。どう思いますか。
ミ:「周りが明るくなればいい」はまさにいじめの本質じゃないかな。特に「いじられキャラ」って勝手につけておいて、こいつは「いじられキャラ」だからいいと理由をつけて、いつもバカにするのは。
レ:お前は私たち集団の笑いのための犠牲になれ、ってことだからな。
ユ:みんなが笑うことで、直接いじった人だけでなくて、周りのみんなに笑われたということですからね。
ミ:あと、いじられた側が「笑っていれば平気」とも限らない。嫌でも「空気を読んで笑うしかない」こともある。
レ:笑うことは、やられている側がその場所で生きていくための適応だ。嫌だというともっと酷いことを言われるかもしれない、関係が壊れるかもしれないと思うと、笑ってやり過ごすしかない。
~③なぜ、人は他人をいじるのか~
ミ:なぜ「いじり」を楽しいと思う人がいるんだろう?
レ:「いじり」でしかコミュニケーションできない人もいる気がするな。
ユ:そうですね。理由の1つに、「いじり」は相手からの反応が返ってきやすい、リアクションされる確率が高いから、というのがあると思います。
ミ:確かに自分が話をして、相手から何も反応がなかったらショックだけど。
ユ:「いじり」なら、言われた方は自分の評価を下げる・自分の尊厳を傷つける発言を受け入れるわけにはいかないから、自然と反論や反応せざるをえないのです。
レ:言い返したりいいリアクションでなくても、おどおど困っている反応でもいいんだな。
ユ:そうですね。満足しない人はいるでしょうが、そういう人でも無反応よりマシと思うでしょう。人は相手からの無反応を何より恐れますから。
レ:される側としては、無反応だと自分は下の立場だといじってきた人にだけでなく、その場で聞いている周りの人にも認めたことになる。周りも利用して、無反応に逃げられないようにしているのがたちが悪い。
ユ:あと理由として、当然いじる側は支配者の立場に立てる、というか下の立場にならなくて済むというのがあります。
ミ:「支配者の立場で人を支配できる」ことの優越感と、「下の立場になりたくない」という恐怖だね。
レ:いじられキャラと決めて立場を固定してしまえば、安定して優越感を得られるし、恐怖からも逃れられるな。
ユ:さらに理由として、これは悲しいんですが、…楽しめる共通の話題がないので話の種づくりです。「悪ノリ」です。
ミ:…やることないんだろうね。
レ:確かに目の前の奴から話題を生成できるが…、人を辱めないと楽しむことできないのかよ。
ユ:「いじり」は簡単ですからね。理由なく相手をドMと決めつければいいし、やることないけどとりあえずモノマネをムチャぶりしておけば、下手くそでも何か起こりますから。
ミ:それに、集団が大人数になると、共通の話題を見つけるのは難しくなる。そういう意味でも、目の前の人をバカにするのは「楽な」共通の話題作りだね。
レ:この言い方は悪いかもしれんが、いじりは、人を傷つけるハイリスク、楽しみはローリターンだけど、とにかくローコストで楽なんだな。
ユ:そのリスクが一方的にいじられる側に降りかかってくるという理不尽なものですけどね。
ミ:いじる側は、その自覚はないんだろうね。
レ:相手が傷つく可能性なんて、考えない方が楽だからな。でも、考えなきゃいけないことだ。
~④おわりに~
ユ:さらに難しいのは、他人からの無反応が怖い、コミュニケーションを取りたいというのは「いじられる側」にも当然いえることです。
ミ:だから「いじられキャラ」を受け入れて、少々嫌な事があってもコミュニケーションできてるから我慢しちゃう人もいるんだね。
レ:私はいじられても無反応だし、すぐ不快感を前面に出すから、相手も面白くないんだろう、あまり「いじり」はされなかった。
ミ:中にはその集団にいるために「いじられキャラ」を受け入れる人もいて、そうやって取りつくろって笑っている人が、「なにいつもヘラヘラしてんだよ」って言われているの見ると、本当怒りがわいてくる。…その状況を見てても、それは良くないって外野からいうのは難しいけど。
ユ:同級生でもいけませんが、これが先輩からだともうハラスメントですね。
レ:人をいじらないと楽しめない人や集団なんて離れればいい。離れた方がいい。…ただ、孤独という恐怖からそれができない気持ちもわかる。
ミ:強い立場の人はいじりをやめてほしいし、周りが他者をいじり出したら良くないってたしなめてほしいね。
レ:ほどほどの立場の人も、せめて同調して笑うことはやめるべきだな。
ミ:あと、いじらなくても話題はいっぱいある。共通でなくても、自分の知らなかったことを聞くことは楽しいよ。
ユ:いじりがなくても楽しい人間関係、集団を築いていきたいですね。
レ:その方がみんな楽しいからな。
ユ:それでは、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
レ:次もぜひご覧ください。
ミ:またね!
②の参考資料:NHK「いじめノックアウト」2014/8/22放送
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