次章予告 (第三章よりシーン抜粋)

 次章予告。



 「ねぇ…………どうしたの? 由紀ちゃん

 …………なんて………今、なんて、言ったの? 」


 その、言葉に、由紀は胸に込み上げるもので、溺れそうになった。

 秋の物寂しい風と共に、その感情に全てをぶちまけたくなる感情を必死で押し殺し、そして、化粧ですっかりと大人っぽくなった、長谷川の瞳を………見つめた。


 「わ、私がいけないんです

 ………私が皆に迷惑ばっかり掛ける、ドジな子だから

 ……だから、いいんです………仕方が無いんです。」

 そう言った由紀に、長谷川は泣きそうな表情で、首を必死に振った。


 「違う‼ だからって、由紀ちゃんがあんな目にあわされるなんて、絶対に間違ってるし、それを由紀ちゃん自体が納得しちゃ駄目なんだよ‼ 嫌なんでしょ? 嫌なら『止めて』って言わなきゃ、駄目だよ‼ そんな考え‼ 絶対間違ってるよ‼ 」


 二人の間に、木枯しがまるで、熱を諌める様に吹く。

 由紀は、長谷川に表情が見えない様に、俯くと途切れ途切れに、その言葉を囁いた。

 「い、今までは……きっと………長谷川さんや………愛子ちゃんが、すごく……優しい人だったから………二人は、私の掛ける迷惑を………許してくれてたんです………」


 その言葉に、長谷川は首を横に振る事しか出来なかった。

 続く、由紀の心を動かす言葉が、見つからなかった。


 「いままで、本当に、ごめんなさい。

 そして、ありがとう。長谷川さん…………心配させて………ごめんなさい。

 もう……もう、私の事は、放っておいて下さい、このままじゃ、長谷川さんにまで、ご迷惑をお掛けします………


 ………ごめんなさい………さようなら……」

 言葉の最後は涙声であった。



 「まって‼ 待ってよ‼ 由紀ちゃん‼ 」

 長谷川が、そう必死に呼び止めても、由紀は止まらなかった。少しずつ小さくなるその人影を。長谷川は、ただただ見つめる事しか出来なかった。






 「盤上の戦乙女、苫米地由紀。いざ、推して参ります。

 次章、由紀十三歳 秋に乞うご期待下さい。」








 「ママ…………どうして? 」

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