世を厭い、一人暮らししていた祖父の死。遺品整理の下見のため、主を亡くした家を訪れた「私」が見たのは……?少し昔の日本、古風な文章。不穏な空気が多少漂っているものの、静かに進んでいた物語は、ある時点で、眩惑感をもって迫ってきます。祖父は何故死んだのか――。お薦めです。空っぽの、その空っぽが恐ろしい……集め続けた孤独の王は、
物語の構成、話の進め方、風景や心理の描写、間の取り方。どれを取っても素晴らしく筆者さんの実力をひしひしと感じます。作品全体に満ちるやや古風な雰囲気が作品のテーマと合っていて、一気に引き込まれます。物語の核心は少し難解ですが、その難解ささえも読者に作品を印象付けさせる一要素としてうまく機能していると思います。お見事です。