リンク 永遠の絆

高橋聡一郎

第1話リンク 永遠の絆

私、浅利則之は青梅街道を東へ、愛車である白のハイラックスを飛ばしながら、周囲を探索していた。

私は威張る事ではないが、某新聞社の社員である。いや、正直に言えば赤日新聞社の子会社赤日芸能の契約記者というかフリーライターだ。だが、女性をナンパする時には堂々と赤日新聞の社員だと名乗る。因みに名刺もバッチリ赤日の社員で作ってある。

「ふっ、完璧だ」

まぁ私は少しロリが入っているので、結婚に餓えている世代・・・オバンには興味ないのだが・・・まぁ、その場合は赤日芸能の名刺で芸能界に入れるよとか誘惑するようにしている。

「ははっこの世は馬鹿が多くて楽しいぜ」

だが、最近は金がない。

本当にない、仕事が回ってこない、だから、最近のナンパはナンパする時に、売れない小説家等と卑下した感じで相手に媚びなければならない・・・腹が立つことだ。

妻と子供には既に逃げられた。「あんたの様な馬鹿には付き合いきれないわ」だと、正直妻を憎悪している。子供は別にどうでも良い。養育費も払ってない、金ないし・・・。男の子だし・・、育てる楽しみ男だと少ないな・・とか、考えていると、目の前に初めて見るアダルト系の中古書店が見つかった。

「ほう、さすが私の観察眼は伊達じゃないな。私のこの知性が憎い・・・」

とか、言いながら、独り言・・・。

私は意気揚々と路上駐車した。大丈夫だよね・・・。

ブルセラ時代は楽しくて良かったな・・とか思いながら店に入る。

まぁアダルトグッズやエロ本、中古のエロ本に申し訳程度の一般漫画が揃っている。

「日本の政治は狂っている・・私のような優秀な人間が変えるべきだ。ブルマを返せ」と店主の前で言ってみた。

店主は馬鹿を見るような目で私をみた。

「おっとっ」と私はポケットに入っている赤日新聞の名刺をさりげなく落とす。

「お客さん、落としましたよ」

おいおい、見てから渡せよ。

「いいんだ、捨てといて・・・」

「ゴミを捨てないで下さい」

「ちっ」

私は舌打ちをして、名刺をしまった。全くこれだから愚民は・・・。

さて、面白いものあるかな・・と所持金が少ないにも関わらず、アダルトグッズコーナーへ、オナニーグッズはやはり高い・・・、色々見て回ったが結局高いので止めた。

次は中古のエロ本だ。

「おお、LOが沢山あるじゃん、買ってないのもあるある」

私は中古本が好きだ。安いから。

私は正直、クジラックス先生とたかみち先生を崇拝している。

LOこそこの世の真実である。(読者の皆さんは検索して調べないようにお願いします。)

私の愛車、白のハイラックスもクジラックス先生に影響されて買った。最高だぜ、ハイラックス。

私はLOを大量に持ち、DVDコーナーに行った。

なんか面白いの無いかなと探してると、珍しくビデオテープがある。私はこれは・・・と思った。規制の緩い時代のアレではないか?私は興奮し鼻息が荒くなるのを感じた。

これは宝の可能性がある。

白いケースに入った如何にも如何わしいパッケージ。題名は「リンク 永遠の絆」と書いてある。そして、なんと値段が300円・・素晴らしい、この店万歳、店員ムカつくけど・・。

私はレジへと急いだ。

私が愛車である白いハイラックスに乗った時、どんなに希望と欲望に萌えていたか諸君には分からないだろう。

嘗て悪友とガムテープとビデオカメラ、スタンガン等を装備し、一晩中走り回った以来の興奮度と言えば良いすぎだろうか・・まぁ結局何もせずに、ドライブしていただけだったのだが、まぁLOに書いてあるように、「Yesロリータ! Noタッチ!」は正しいのだ。LOは神。因みに「ロリコンなら子供を守れ」はあまり同意できない。だって子供って嫌いだし・・。

私はアパートに着くと押入れからVHSのビデオデッキを取り出し、回線を繋いだ・・手が震える。そして、ビデオデッキのパッケージを開けるとビデオを挿入した。

また、PCへの入力も忘れない。PCの方が便利だし・・。

そのビデオは荒い白黒ノイズから始まった。で、アパートの一室らしい場所に男が立っている、男は必死に身振り手振りを笑顔でするが、ノイズが多くて聞き取れない。もしかして漫才なのか?期待して損した・・・。俺の300円を返せと思いながら、テープを取り出そうとした時、笑いの発作が起こった。

何が楽しいのか、可笑しいのか分からない、しかし、この詰まらないテープを取り出そうと言う行為自体が兎に角堪らなく面白くて仕方がない。

くくくくくくっ

私は、結局テープを取り出せず、最後まで見ることになった。

最後にこのテープを3人にダビングして見せないと貴方は笑い続ける事になると書いてあった。

「えっ、くくくくっ、わはははっはっ、ええ、そんな・・・馬鹿な、なんてアホな・・堪らない。くくくくくくくっ」

これは、生命の危機だ笑い続けたら社会的にも生命活動の上でも精神的にもやばい。

いや、なんて楽しいんだ。これは皆で共有すべきだ。

私には友人が一人だけいる。東海大学の文学部に所属していたが、モテないという理由から医学部に転入したクズだ。名を高岡竜太と言う。少なくとも私よりクズだ。彼なら都合が良いだろう。

私は電話をした。

「よ、久しぶりだな・・・」

「くくくくっ、あまり面白いこと言わないでくれ、息が苦しい」

「おいおい、どうしたんだよ、浅利、気でも狂ったか?」

「止めてくれ・・・俺を笑い殺す気か・・・くくくくっ」

「・・・・まぁお前元から頭おかしいし」

「くくくくっ、どうでも良いから俺の家に来てくれ、面白いビデオがあるんだよ」

「今からか・・・オナニーして寝るところだったんだが・・」

「わはははははっ、オナニーよりも有意義だぞ、たぶんな・・・くくっ」

「分かった行くよ」

「くくくくくっ、わははははっ、おう、待ってる・・くくっ」

数分もしないで高岡は来た。

私は笑い続けながら、高岡の全てが愉快だ・・・。もう喋らないでくれ。窒息する。

ビデオを映して、強引にテレビの前に座らせた。

高岡は初め真剣な顔で見て分析していたようだが、次第に顔がにやけ、笑い出した。

「くくくくっ なんだよこれ・・・おいおい、これって・・ぷっ呪いのビデオじゃねーの?くくくっ笑える、アレだな一時期流行った貞子?えーとリングか?ぷぷぷっ」

「だろ、くくくっ笑えるよな。呪いのビデオって、くくくくくっぷっ」

「笑っちゃダメだ笑っちゃダメだ、わらっちゃ・・・くくくくくっひひひひひひっぎゃはははははっ」

「と、兎に角だな我々は、ぷぷっ、生命の危機にある、くくくっ」

「ああ、お前の俺への悪意はよく理解したよ、くくくくっ」

「でだ、我々はこのビデオというか動画を・・・ぷぷっ、人に見せなければならないわけだ・・ひひひひぃぃぃ、息が・・・くくくっ」

「うーーむ、ぷぷっ、どうしようか?誰に送る?くくくっ、嫌な奴に送ろうぜ、けけけけけっ」

「兎に角、俺は逃げた嫁さんだな・・・ぷぷぷっ精神病院に入れってんだバーカ、ぷぷぷっ」

「いや、Youtubeとか色々な動画サイトの方が効率が良いだろ、くくくくっ効率いい、効率効率効率ひひひひひっ」

「まぁどっちも実行しようぜ、皆が幸せになれる・・・・・・くくくくっけけけけけけっ」

「そうだな、我々は偉大な行動をこれからするのだ・・・ぷぷぷっ悪意を持って、ひひひひひひひひっ、う、苦しい・・ぷぷっ」

「じゃ、俺はDVDに焼くから、お前はネットに放流してくれ、ぷぷっ実に良いことをすると楽しいなぁ、俺はこんな充実感は初めて・・・だよ、ぷっくくくくくっ」

俺たちは発作的に笑いながらもDVDへのダビングとネットへの放流をし続けた。

勿論、私は嫁さんや会社の嫌な奴、俺を振った女どもにDVDを郵送した。郵便局では相当変な目で見られたが、そして、高岡はネットに放流した動画をどうやって拡散するかを試行錯誤し続けた。

それからはあまり語りたくない。

私たち二人は警官と保健所?の職員に数日後に捕まった。

そして、隔離病棟で数か月監禁された・・最初は笑えたが・・刺激がない状態は段々と私の心を愉快な気持ちから離れさせていった。

どうも、この事件は立証が難しいそうで、我々は罪には問われないが、都知事の命令によりというかもっと公安等の上層部の判断で半永久的に精神病院に入れられるのだそうだ。親が泣きながら教えてくれた、私は笑っていたが。まぁ私も被害者だよね?

まぁどうでも良い情報だが、ビデオの作成者は山室貞夫という売れない芸人でそれを苦に自殺したとか・・・実に笑える。ひひひひひひっ死ね死ね、くくくくくっ、いや素晴らしい才能じゃないか・・貞夫君・・どうでも良いが・・・ひひひひひっ。

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