Poetess

葉々は紅黄に変色、午後4時、11月のとある日の黄昏、福生市中央図書館を後にした明子はステューシーのグレーパーカーと濃紅の口唇、丁寧にもケアされた薄茶のロングヘアー、ショートパンツ。若い男の眼(まなこ)を血走らせるような風体をしていながら、知性が気品を漂わせている妙齢のPoetess。華奢な彼女はbeatsのtourでNasのRepresentに聴き入っていた。

図書館で、『華麗なるギャツビー』の原書を意気揚々と、挫折の予期をせず手に取り、冒頭の名文をすっかり暗唱し、青白い悦に浸っていた。

「Nasのillmaticは次のit ain't hard to tellでおしまいね。」

珍しくもCD Walkmanを愛用する彼女には友人がいない。精神疾患発症後、服薬を続けながら通信制高校を卒業、伊文科に進学、地頭の良さからマイナーであろう学部を選択することができた明子はロマンス語とゲルマン語に引き裂かれそうになっていたが、文学的興味がコカインのように彼女の精神の体を仮初めにも維持していた。

“Illmatic”が終わり、彼女はCDケースから、"ready to die"を取り出して

A hot chick, sipping Monster drink, listening to Nas, Biggie, A Florence dweller in my mind, cannot help but reminisce her.

“She's not anyone, tremendously beautiful, O Beatrice.”

と呟いた。

「人生は悪くない、セックスもいずれ覚えるわ。ただの文学的興味だけれども。」早熟のvirgin poetessは微笑した。

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ハガルの子 ヨシニーチェ @yoshinietzsche

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