1番線東京行きはまもなく…


私は電車を待っている。隣には古い知り合い、目が合ったのだが、知らん顔をして、隣に並んでいる。互いに他人のように振る舞う二人。私は新興宗教を苦しみとともに止めた。隣の冴えない妙齢の女は「大神」を求めている。


私立中高一貫校の学生たち。見栄っ張りの両親、堅実な中年の会社員、枯れた顔の老婆から3DSを執拗に求める子らは集ってモンスター・ハンターをしている。大きなエナメルバッグは校内でのクリャトリア、闘士の証である。


制服を着た一人のパーリアは遠目でクリャトリアを見ている。羨望の中、欲情と混ざる形容しがたい虚しさが去来する。彼は帰宅部だった。


叫ぶ身体障害者に惰眠を奪われ、遠い目をする人々。iPhoneでツイートするものもいる。黄昏の国分寺駅のホームでみな東京行きを待っている。


叫ぶ身体障害者に冷たい視線を注ぐ東京行きを待つ人々。時折嘲笑するものもいる。黄昏の国分寺駅のホームで、皆東京行きを待っている。

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