ハガルの子

ヨシニーチェ

ハガルの子


曇天の11月、ドナルド・トランプがオバマに次いで次期大統領となり、ファックトランプの喧騒の中にいて、充は図書館にいた。大きなSupremeの旅行用の馬鹿でかいバックを肩にかけ、翌日の疲労に対して全く慮らず、岩波文庫の青版の棚、古代哲学の棚に目をやっていた。

充の心は、彼は心に聖書の言葉を携えながらも、セネカ、マルクス=アウレリウスを志向していた。妙齢とはほど遠く、瀝青の澄んだ心、緑のバナナと形容することができるような青二才は、悩みを抱いていた。悩み、その解釈は地理的状況によって二分されている、洋の東西を問う問題である。

靄のかかったangstは大文豪、芥川を自死せしめた。

クロコダイルプリントの大きなカバンには数冊のレクラム文庫。

Supreme、Ralph Lauren 青二才の見栄と、隔世的な書書。

そのようなアナクロニズムの中にあって、充はその名のごとく、友に囲まれていた。他の個性を尊重するということ、人は並べて年代記なのである。しかし偏ったDenkwegをその年代記は孕んでいる。充は偽善者たちを軽蔑、非難したこともあったが、その笑いは自身の偽善への冷笑に過ぎない。聖書の名を騙り、女を買うがごとくの罪を誰しもが有している。

「私はハガルの子だ。全てに逆らい続ける、これからの人生、収入は塵のごとく、孤独であるだろう、偽善者を笑い、自分を笑い、頑迷さを軽蔑し、自己につばきをかける。

私はハガルの子だ。吹き荒ぶ無謬性の脂ぎった顔を笑い、自分を笑い、吹き荒ぶ木枯に足元蹌踉めく…」

充は賢帝アウレリウスに心で深く一礼をし、ハンス=ギーベンラートに同情しながら僅かに涙腺緩みこう呟いた。






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