free bird

結葉 天樹

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僕の家は小さい。

どれくらい小さいかと言うと、数歩で端から端まで行けるくらいだ。

昔はそうでもなかった。

でも時が経つにつれてどんどん狭く感じてきた。

ああでも、よく考えたら僕が大きくなったんだと最近気付いた。


僕の家は明るい。

いつも窓際にあるからいつも陽の光を浴びる。

いつも青い空が見える。

僕の家とは比べ物にならないほど広い世界がそこには広がっていた。

でも、僕は家の中から出られない。

細い金属の棒が何本も組み合わさって僕を閉じ込めているからだ。


僕は毎日同じ時間にご飯を食べる。

太陽が決まった高さになると誰かが食べ物を持ってくるからだ。

僕の家のたった一つの入り口を開けて食べ物をくれる。

何て言う食べ物か知らないけど美味しかった。

ご飯をくれた人はいつも笑顔で僕の食べる姿を見ている。

たまに僕に触れたりしてもっと嬉しそうに笑う。

話しかけてくるけど僕にはこの人の言葉はわからない。

でも幸せなんだってことはわかった。


僕の家はこの人の家の中にある。

この人も僕と同じで家に一人だけだった。

時々誰かが訪れる。

この人はその時も幸せそうな顔をしていた。

ひとつ気になったのはその人たちの中でこの人の頭だけが白かった事だった。


ある日、突然白い頭の人は僕の家を訪れなくなった。

太陽がどれだけ動いてもあの人は来ない。

お腹が空いてきた。

変だな、あの人はどこに行ったんだろう?


次の日、誰かがやってきた。

でもそれはあの人じゃない。

前にこの家に来たことがある人だ。

何か騒いでいる。

ああ、それにしてもお腹が空いたなぁ。

その日は知らない人からご飯を貰った。


次の日もあの人は来なかった。

この日もご飯は知らない人から貰った。

次の日はたくさんの人があの人の家にやってきた。

何故かみんな黒い格好で泣いている。

その中にもあの人はいなかった。


次の日、知らない人が僕を家ごと外へ連れて行った。

広い場所でその人は僕の家のドアを開いた。

僕は小さい家を出た。

そして両手一杯に風を掴まえて飛び上がった。

遥か遠くまで見渡せた。

でもまだ世界は広がっている。

世界は考えていたよりもずっと広かった。

僕は飛んだ。どこまでも。

あの人を捜して……どこまでも。

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free bird 結葉 天樹 @fujimiyaitsuki

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