ノブ、ヒデのラジオ相談室 3

 ラジオから軽快な音楽が流れ出した。

「はい、こんばんわ。今週もこの時間がやってまいりました」

「うむ、ノブのラジオ相談室。今週も良しなに頼む」

「そうですね。では今日もばっさり言っちゃいましょう!」


 はがきをめくる音がする。

「さて、今晩は総選挙についてのお葉書が多いですね」

「うむ、国民の関心事となっていることは喜ばしい」

「投票は国民の権利であると同時に義務でもあります。皆さん、投票に行きましょうね」

「権利の放棄は何も生み出さぬ。言いたいことを言う良き機会じゃぞ?」


「さて、それでは……K産党幹部の方のお葉書です」

「何々……喜多川政権の横暴を許すなと?」

「横暴……ねえ?」

「まあ、彼らにも理想とする国体がある、ということじゃな。ただし、それが折り合わないからというて攻撃をするのはどうかと思うがの」

「全くその通りですね。そもそもあの方々どこの国の利益を代弁してるんですかね?」

「日ノ本は豊かな国ゆえより貧しい国に施さねばならんとか思っておるみたいじゃぞ?」

「まあ、考えは立派ですが、その貧しい国とやらが国民を飢えさせてミサイルぶっ放してる時点でお察しですね」

「全く、どこの国の事やら……のう?」


「次の葉書です。ふむ、某最大野党元党首さんですね」

「あの国籍詐称女か?」

「や、あの人は党首から降りまして、次に党首になった人が今回の解散で解党して中池さんのところに合流してます」

「中池氏は確か、かなりバリバリのタカ派なこと言ってなかったか?」

「ですねえ、リベラルとは相いれないはずですよ。若干玉虫色の主張になっていますけども」

「というかだな、中池氏も大変だの。戦は数が大事ではあるが、それは全員が大将の元同じ方向を向いていなくば力など発揮できぬ。烏合の衆の見本ではないか」

「まあ、敵ごと無能な味方を殲滅したくなることってありますよね。うふふふふふふ……」

「ヒデよ。黒いぞ?」

「黒くなきゃどっかのハッチャケ兄を補佐なんぞできません」

「いつも済まぬな」

「いえいえ」

「ふむ、中池氏の立ち上げた未来の党じゃが……支持率が急落しておるらしい」

「4%ですか。これはひどい」

「東京都内でも6割近い支持率が半減しておるな」

「絵にかいたような自滅ですね」

「そうそう、話がそれまくったが、結局元党首とやらの言いたいことはなんじゃった?」

「ああ、解党したら全員拾ってくれるって言ったのにだまされた、と」

「ふむ?」

「今まで掲げてきた政策とかを160度くらい転換する羽目になった人がかなりいるみたいですね」

「風見鶏ゆえ仕方あるまい」

「うっわ、ばっさり言いやがったよ兄上」


「次は?」

「日本の未来を考える党からです」

「ふむ。かなり過激な表現も含まれるな」

「敵基地攻撃能力を持つべきですか。賛否もありそうですが」

「まあ、話し合いだけで解決できるならそれに越したことはないがな」

「言葉が通じない相手っているんですよねえ」

「どっかの野党が9条を金科玉条のように崇め奉っておるが、憲法とはいえ法の条文に物理的な力はない。戦争反対と叫んでもミサイルは飛んでくるのじゃ」

「悲しいけど、それが戦争ですね」

「そもそも、半世紀も憲法が全く改正されておらんというのもおかしな話でな」

「まあ、法律はあくまで道具ですからね。方便と言い換えてもいいですが」

「現状に即しないのであれば変えるしかない」

「変えたら戦争が起きるって、軍事音痴もここに極まってますね」

「近代戦というものを知らぬにもほどがある」

「竹槍持たせて突撃ですか?」

「自動小銃持たせた兵数人で制圧できるな」

「そもそもそういうレベルで戦闘を行うということは本土決戦のゲリラ戦ですからね」

「侵略、すなわち遠征してる状況ではないですよね」

「正面に展開する兵力を支えるのに後方支援はその数倍を必要とするのが近代戦じゃ」

「スペシャリストの集団じゃないと戦えないんですよねえ」

「そもそもいきなり素人に銃を持たせても暴発させるか味方の背中を撃つのが落ちじゃ」

「そういう人に限って、総理が出撃って叫んだらどっからともなく軍人が集まって遠征が始まるとか思ってそうですね」

「今も昔も、出陣の号令を下すまでにどれだけの準備が必要か。そして、その令を下した時には勝負は8割がたついておらねばならぬ。そこを理解してもらいたいものじゃのう」

「まったくです」


 ここで軽快な音楽が流れ出す。

「さて、それではお時間です」

「今日も有意義な議論が……できたのかのう?」

「それはリスナー様が判断されることです」

「うむ、そうじゃの」

「では、また来週、このお時間にお会いしましょう」

「著作、制作は内閣府じゃ。また来週!」

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