キャラクターファイル

『押して参れますか、新銃士?』/フラッグノーツ

 給料日には、人の世の喜びすべてが詰まっていると思う。

 酒、博打、女遊び、男遊び、買い物、観劇……喜びの見つけ方は、ひとそれぞれ。

 けど、この新銃士にして将来の宮廷魔法使いたる“僕”の場合は、ひとり飯! 寮の夕食を辞退して、優雅にプチ・グルマンディーズ気取りというわけだ。

 今日はどの店にしよう? ハーフオークの大将が作る牙鬼流ブイヤベースが絶品の店かな、もっと張り込んで『金色の塔』の魔素エスプーマ、あるいは……ふふっ、ささやかな喜びよ、今すぐ行くから待ってておくれ!


「あっ、新人さん! 奇遇ですね! 会えてよかった!(お腹空きました!)」


 ……かくして、僕のささやかな喜びは終わりを告げた。そして今、目の前では幸せそうに、シャルロット・ダルタニアンがふたつ目の安定食をガツガツとかっこんでいる。


「シャル、美味しいかい?」

「はひっ、しゅごくっ!(おかわりしたいっ!)」

「……女将さん、日替わり追加~。ったく、なんで給料日にキミは金を全部、人にくれてやっちゃうかな。通りすがりの、赤の他人にさ」

「でも、あの人、困ってるみたいだったから。仕入れのお金を盗まれたって……」

「それ、寸借詐欺って言うの! お人好しめ!」

「ごめんなさい……来月、返しますから(予定)」

「ああもう、いいよいいよ。だから食べて食べて!」

「おうっ、ありがてぇなこの野郎! 女将さん、アタシは鶏の香草焼きと白パンな! じゃんじゃん持ってきて!」


 なんか増えた。


「借金取りが全部持ってってさ! 金額よくわかんねぇから、給料袋ごと投げつけてやったぜ! どうよ! でもまだ足りないって。すげぇなアタシ!」とルナ・アラミス。


 さらに。


「お給金はすべて慈善のために寄付しておりますの。生活費を銀行から下ろし忘れていたのは、不覚でしたけれど……」と、ヴァローナ・ポルトス。


 とどめに。 


「……実はそこで、仕入れの金を盗まれて困ってると(以下略)」とオリヴィア・アトス。


 銃士隊は、ボンクラ揃いかよ。とはいえ、見捨てるには忍びない。

 僕も銃士の端くれ。

「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」

 この精神は、それなりに尊重しているからね……。


「ふー、満腹です!(デザートなんにしよう♪)」


 シャルロットを筆頭に、みんながひと通り満腹になった頃。

 僕たち5人の懐から、けたたましい音が鳴り響いた。

 銃士隊章のクリスタルが緊急招集を告げている。これはつまり―――


「諸君。王都を脅かしかねない魔法犯罪が発生したぞ。それも、一般衛士の戦力では対処しきれないようだ」

「あら素敵。私たち銃士隊の出番というわけですわね」

「よっしゃ、喧嘩か! 任せろよーっ!」


 銃士の出動……となると、アレを行なうのだろう。戦いに赴く前、皆の剣先を合わせて「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」と唱和し、誓う。

 内部の結束を高めるだけでなく、見る者にも「おお、なんと気持ちの良い連中であろうか!」と感銘を与えること間違い無し……まさに、銃士たちの名場面!

 オリヴィアは、その凛とした美貌に相応しい美声で号令を―――


「唱和っ!」

「ひとりは、みんな(あたし/私/アタシ)のために!」


 見物人たちの間に、「……?」という微妙な空気が流れた。

 今の何かおかしくなかったか、いや聞き間違い……?、でも確かにてんでバラバラのことを―――皆、口にはしないものの、共通してだいたいそのように思ってるんだろう。


「貴様らっ! きちんと唱和したまえよっ!」

「……僕はちゃんと言ったからね!」

「はいっ、なんのことですか! あたしはちゃんと言いました!(言ってない)」

「シャルの田舎訛りか、ルナの下層訛りを聞き間違えたのではなくて?」

「おいテメェ、乳牛女。今なんつったよバカ野郎」

「言い争いはやめろ! 第一、ルナ! なぜ剣でなくて店のナイフなんだっ!」

「あー、アタシの剣、質屋に入れっぱなしでさぁ」


 もう、グダグダだ。誰か、誰か救いの手を―――!


「ああっ! ワイバーンがうちの子を! 誰か、助けてくださいっ!」

「!!」×5


 外から聞こえてきた悲鳴。

 瞬間、僕たちは表情を変えた。もはや誓ってる場合じゃない!


「行こう、みんなっ!」

「「「おうっ!」」」

「行きましょう!(行きます!) 銃士隊! 強く激しく、押して参りまーす!」



★『押して参れますか、新銃士?』とは?

 魔法王国ブルボニアを舞台に、勇敢な銃士隊の活躍と恋とドタバタを描いたファンタジー作品。

 主人公は宮廷魔法使いを目指して王都パリに向かう途中、銃士見習いを自称する純朴な少女シャルロット・ダルタニアンに出会い、大きな騒動に巻き込まれてしまう。

 気づけば主人公は、ダルタニアンの友人(=お守役)として銃士隊に入れられ、ふたりでやっと一人前……いや0.7人前くらいの「新銃士」を拝命するはめに。

 善人だが勢いだけのダルタニアン、それぞれクセのある先輩美少女銃士三人組アトス、ポルトス、アラミス、そして様々な陰謀(多すぎて本人も把握しきれてない)を巡らすリシュリュー枢機卿らによって、主人公の人生航路はこれからも果てしなく大きくひん曲がっていくのであった……。

 推して参るどころじゃどうにもならない人生を、強引に“押”して通って参らせる、タフな連中の物語。



★登場人物紹介

シャルロット・ダルタニアン 14歳・女性

 ブルボニアの田舎ガスコーニュのさらに田舎の村で心身共に健やかに生まれ育った、ザ・田舎娘・オブ・田舎娘。

 その性格は、“純朴で優しい暴れロバ”という表現で察して欲しい。騒動も起こすが、それは大抵、困ってる人を助けるためだ。なお、正直すぎるため、何かを言った後に本音を()付きで声に出してしまうクセがある。彼女の前では、いかなる秘密も暴かれるのだ!(迷惑)

 金もコネもない彼女だが、人十倍の勢い&人百倍のタフさで、文字通り「“押”して参り」銃士隊に自分の居場所を作った。

 主人公のことは、“新銃士”仲間として慕っているが、恋か友情か曖昧なお年頃。


オリヴィア・アトス 17歳・女性

 謹厳実直にして文武両道、“銃士の鑑”とまで評される少女。現銃士隊長トレヴィルの信任も厚く、次期隊長は確実と言われている。

 そんな彼女だが、それぞれに癖の強いポルトスやアラミスとはウマが合うのだから、人間の相性とは不思議なものである(拳で殴り合うことも珍しくはない)。

 なお、戦闘の修羅場以外では極度のあがり症で、人前で喋るときは、表面上はクールを装いつつも、常にテンパっている。同じ年頃の男性とふたりきりなど、もってのほかだ。つまり、職務上、面倒を見なければならない主人公のことはバリバリに意識せざるをえないのであった……頑張れ。


ヴァローナ・ポルトス 18歳・女性

 新興成金ポルトス家の令嬢にして、ブルボニア有数の銃の名手。金で爵位を買った父・没落貴族から嫁いだ母・本人は父の愛人の連れ子と、貴族社会で陰口を叩かれる要素満載だが、ヴァローナ自身は「全部本当のこと。でも、家庭は円満ですのよ♪」と気にした風もない。なお、家族への無根拠な人格批判に対しては、即座に決闘で叩きのめす。

 理想とするロールモデルが父であるためか、ヴァローナもまた、多くの老若男女と浮名を流してきた。最近のお気に入りは主人公らしいが、事情通の見立てでは「近年にないほど本気かも」との由。マジかよ。


ルナ・アラミス 14歳

 監獄生まれストリート育ち、悪いヤツらはだいたいダチ公。刹那の感情だけでやらかしては逮捕され、ついた懲役合計5万年。そんな名うての不良娘が、なんの因果か銃士隊。

 以上が、ルナ・アラミスの人生のあらましである。深いことは考えず、「おもしれえ!」「バカ野郎この野郎!」「飯だ風呂だ博打だ!」「戦だ祭りだ!」だけで日々のよしなしごとは事足りるシンプルライフを送っている。

 いわゆる、三銃士のムードメーカー兼バカ。初歩の計算や読み書きの一切ができないが、最近は主人公に教えてもらっており、一応の上達を見せているらしい。

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