本格的。映画感覚の"心に残る"短編小説。

ネット上に氾濫するキャラクターありきのドタバタ小説とは一線を画す、緻密に練られたうえでの自然体な作品でした。
本格的ですが読みやすく、主人公の故郷に対するわだかまりがとけていくのにそって、私の心の中で絡まった糸もほぐれていくようでした。読了後はサラッとした温かさが心に残ります。
故郷を受け入れ、母の死を受け入れた主人公ですが、父との間の溝が埋まらなかったのが気になりました。しかしそれこそが自然で、作品に余韻を持たせたとも思います。
作品名どおり、色彩の移り変わりがとても美しく、映像美を感じました。加えて、ある意味淡々とした文章と対比的な人情味のある佐賀弁は聴覚的な刺激になりましたし、回想のカットインなどが効果的で、映画的な作風だと感じました。魅力的です。
素晴らしいデビュー作をありがとうございました。次回作も楽しみにしています。