自分の意志を貫く生き方をしていたために孤立気味だった主人公は、陰湿な暴力にさらされた結果、死を選んでしまう……が、死ぬ寸前に巻き込まれた異世界転移をキッカケに自分を取り戻し、持ち前の判断力で妹たちを助け出す……こんな感じの出だし。
この作品の特徴としては、主人公の男前な考え方や、個性的な美少女達とのアレコレや周囲を導く手腕、そういったものが他とは少し違うところが面白くて魅力的です。
独善的にも見える主人公の行動指針は、世間一般とは違う自分の中の分別や優先順位が基準のため、好き嫌いが分かれやすいかもしれませんが、ハマる人には堪らなく面白いと思います。
作品の世界設定が秀逸で、登場人物の魅力や価値が幾分かは他者にも分かるような仕組みがあったり、人の魅力や性欲が増したりすることで色々と起こる楽しい状況など、上手に組み込まれています。
序盤から割りと人が死にますが、敵役以外で死ぬ人は基本的に名前等が出ないので、感情移入して気持ちが落ち込む要素は配慮してあると思います。
可愛くて魅力的な美女や美少女が沢山居て、その可愛い女の子達との色々な濃いシーンもありますが、それらはサラッと書かれていても、なお面白さを増してくれています。
異世界で生きていくという覚悟を持ち行動する男前な主人公が導く、一風変わったハーレムな冒険譚を楽しめる作品です。
学校全体での異世界転移ですが、主人公がもらう女神さま最後の援助が肝(キモ)。パニックからの困惑、とっさの冷静、行き過ぎ、横道に脱線と、登場人物たちは必死な割に、いかにも中学生~高校生らしく未熟なまま突き進んで行くようです。
強者が羽振りを利かせる世界で、そうそう元の世界の「甘さ」から切り替えが出来る訳もなく、死体の山を前に誰も彼もが右往左往する中で、主人公のやや歪んだ実直さが妹やその友人・部活仲間たちを救い、必然そのリーダーとならざるを得ません。
「生存」に特化する容赦のない言葉を吐く主人公は、その合理性や冷徹、実利的判断を認められていくのですが、優しさがないわけでもなく、自らに課した「規律(じぶんるーる)」を胸に仲間を守っていくのです。
チートでハーレムな展開に雪崩込むのも仕方ありません。
下心を隠さず、空気読まないセクハラ失言をしては妹らに睨まれたり、怜悧で計算高い言動で時に周囲を庇う主人公の気遣いが、ハードモードの異世界生活を少しだけ息をつけるものにしています。
総じて登場人物たち個人の未熟さが、いささか以上に過激さを噴き出すこの物語にとっての、(生々しい血肉描写以上に)ある意味「リアルさ」なのかも知れません。
オークら魔物群が溢れる初期拠点から、生き残りを賭けた脱出をどのように成し遂げていくのか、まだまだ予断を許さない状況です。
リズム良く読み進められる文章も相まって、この物語にはいつの間にか先を楽しみにしている不思議な快感があるように思います。