閑話753・『おもいとおもい』

切り口に手を当てる、朱に染まる。


まるで滝のように勢い良く噴出する。


しかし暫しの後に切り口が窄まり流血も停止する。


「いてて」


『殺されなくて良かったね』


「いや。こんな風に切られた時点で良く無いだろ」


『まあね』


「まあねってお前」


呼吸を整えると同時に冷静になる思考。


餌に襲われる時もある、相手の精神に付け込む隙が無かった。


と言うより遊び半分だった。


「美少女だったから許す」


『むむ』


「なんでしょうか」


甘ったるい声に若干の怒りが含まれている。


嫉妬の類なら聞き流そう。


『嫉妬です』


「そうか」


『うえ?!』


「すまんな、嫉妬は聞き流すと誓ったんだ」


『何時?』


「五秒前」


『浅いっ、私の想いより浅いっ』


「嫉妬は重いの嫌だぜ」


『想いだもん』


「それは重い」


『ん?』


「ん?」


傷口も塞がったし移動するか。


しかしわけわかんないな。


半身。

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