閑話754・『おもいとおもい2』

切り口に手を当てる、朱に染まる。


まるで滝のように勢い良く噴出する。


しかし暫しの後に切り口が窄まり流血も停止する。


――女の子のする怪我じゃない、ぷんぷん。


「いてて」


『殺されなくて良かったね』


「いや。こんな風に切られた時点で良く無いだろ」


『まあね』


「まあねってお前」


他に言いようが無いのだから仕方ないよねェ。


怒ってるし。


「美少女だったから許す」


『むむ』


「なんでしょうか」


丁寧口調で聞き返される。


その通りだよ。


『嫉妬です』


「そうか」


『うえ?!』


「すまんな、嫉妬は聞き流すと誓ったんだ」


『何時?』


「五秒前」


『浅いっ、私の想いより浅いっ』


「嫉妬は重いの嫌だぜ」


『想いだもん』


「それは重い」


『ん?』


「ん?」


何だかずれがある。


まあいいか。

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