閑話731・『いるもの』

湖畔の街でお腹を鳴らしても現実では無いので意味は無い。


虚しく音が響き渡るだけ。


「腹減った」


「この世界の食べ物を食べればいいじゃん」


「膨れないだろう、お腹」


「太らなくて良いよねェ」


口元に手を当てて上品に笑うけど俺の半身だけあって腹黒い。


こわ。


「いや、お腹空いた状態より太った方がマシだぜ」


「そう」


「会話を打ち切るな」


「だって太ったキョウなんて見たく無いモノ」


「モノ?」


「モノ」


なんだかニュアンスに引っ掛かりを覚えるが仕方ねぇぜ。


「あっ、お腹空きたくないって思ったら止んだぜ」


「望んだままの世界だからね」


「へえ」


「だから私しかいない」


「ん?」


少し怖くなる。


どうして怖いのか自分でもわからない。


「私しかいらないもんね」


「んと」


答えて良いものか。


応えて良いものか。


「そうかな」


「そうだよ」


「そうか」


「そうl


お腹の音も思考も止まる。


何時だって。

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