閑話694・『お腹は鳴る、生きてる』

ぐるるるるるるるるるる。


体は一つなので自分自身からこんな品の無い音が出ていると思うと生を恥じたくなる。


生きている証拠だけどねェ。


「はらへった」


『お腹が鳴ってるもんねェ』


「下品な音だぜ」


『そだね』


「呆れるぐらいに」


『そ、そだね』


「放屁の音の如く」


『わ、私じゃないからねっ』


「お前も俺だ、下品な腹の音の女だぜ」


『うぅぅ』


「くっくっ」


安宿の木の板を組み合わせただけのようなベッドの上で罵られる。


流石に納得しかねる。


もう。


「げひんおげひん」


『わ、私はお腹空いてないもん』


ぎゅるるるるるるるるる。


『うぅうう』


「はらへった」


『うぅう』


「いいじゃん」


『うぅ』


「下品でも上品でも俺は私だぜ」


『うぅううう』


「聞いてる?」


『ううううううう』


「お腹の音より唸り声の方がうるさいぜ」


うぅ。

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