閑話594・『ころすじぶん』
こっそりと宿を抜けて夜の世界に降り立つ。
二階からジャンプ、衝撃は衝撃でしか無く、全身が震える、誤魔化すように伸び。
「しびれる」
『宿屋の息子さんに好かれたぐらいで逃げ出すなんて』
「部屋に来たらどうする、襲われるのも襲うのもやだ」
『あら、残念』
「残念も糞もねぇ」
顔は可愛かったけど今は男の子の気持ちなので考えると吐きそうになる。
おえ、美少女が良い。
「うぷぷ」
『くぷぷ』
「わ、笑うな」
『じゃあ美少女とお話してる方が良いね』
「自分で言うな、お前も自分だけど」
『うへへ』
「ちっ」
『キョウも美少女だよ』
「だからって襲われるのは嫌だぜ」
身震いしながら夜の世界を歩く、森に入れば虫や獣の気配が蠢くのがわかる。
人間の性的な欲求よりこいつ等の単純な生活の方が俺には心地よい。
「襲われたらブッコロス」
『あらら』
「でも可哀想だから半殺し」
『それもまた可哀想だね』
「じゃあ殺さん」
『優しいねェ』
「………キョウは優しく無いな」
『基本的に殺すね』
「……」
『基本的に』
血生臭い俺だぜ。
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