閑話517・『ラッキー誘拐』

「エルフでお腹一杯、これでエルフを捕まえれる」


『そうだね』


「しかし、しかしだ、見てくれ」


キョウが指差す先には壊滅した集落、焼け焦げた建造物に壊された生活品。


しかしエルフはいない。


「エルフの集落なのに―――エルフがいねぇ」


『キョウが別の集落を襲っている間に別の誰かに襲われたようだね』


「畜生」


『?』


「エルフがいないって事はエルフを犯人が食べたのか」


『いやぁ、どうだろうねェ』


「だっていないじゃん」


『攫われたんじゃない?』


「攫って食うつもりだぜ」


『……』


みんながみんなエルフを食べるわけでは無い、強力な魔法を行使する種族を危険を冒してまで捕らえて食べようとする種はいない。


エルフライダー以外に。


「俺が食いたかった」


『お腹一杯じゃないの?それに攫ったのは売り物にするつもりじゃない?』


見た目麗しい種だもの。


「じゃあ攫った奴と攫われたエルフ両方食えるじゃんか」


『え』


「お得、お得じゃないか」


嬉しそうに足早になるキョウ、エルフの匂いを既に捕捉している。


はしれはしれー、ふふ。


『エルフの集落を見付けるよりお得?』


「攫った奴も食えるからな」


『そりゃそうか』


「攫ってくれてありがとう」


ありがとう、かァ。

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