閑話513・『ほれまけ』

どうしうようもない、お腹が空いたキョウはどうしようもない。


現実世界では真夜中なのでそれまでお腹を抱えて湖畔の街で不貞腐れている。


ぐるるるるるるる、喉の音。


ぎゅるるるるるるる、お腹の音。


「獣だ、畜生だ」


「うっさいぜ」


「近くにエルフの気配もあるんだから我慢なさい」


「うっさいぜ」


「う」


「うっさいぜ」


「こ、この子は」


「うぁぁん、お腹減ったああああ」


腕を掴まれてそのままベッドに引き込まれる、叱ろうとした矢先にこれだ。


ええい、可愛い。


「キョウ、キョウ、キョウ」


「うぅう」


「お腹減ったぁ」


「うぅううう」


「しゅきー」


「…………さ、さっきまでの誓いが」


叱る誓い、呆気無く砕けて消えてしまう。


叱りたくない。


可愛いキョウ。


「お腹減ったのでキョウで妥協する」


「酷いね」


「でも嬉しいだろ」


「まあね」


「顔赤いし」


「ま、まあね」


「べた惚れじゃん、ぷぷ」


笑われた。

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