閑話462・『悪いのはどっちも、太もも削ぎ』
自分が人間だと勘違いされても困る、畜生に良くある事、生き物として自分を見失うのは大変悲しい。
エルフって畜生、獣、それを忘れないぐらいのサイズの―――――家畜小屋でいいか。
「キョウ、ちょっと、歩くの速いっ」
「おぉ?」
腕を掴まれる、振り向くとキョウが僅かに荒い息を吐き出しながらやや涙目になって睨んで来る。
どうして睨まれるのだろう?悪い事はしていないのに。
不思議だぜ。
「そんなに急がなくてもエルフは逃げないよ」
「いや、逃げるだろ、足あるし」
「も、もう、どうしてそうやって―――」
「太ももを削ぎ落として歩けなくしようぜ」
「り、リアル」
「リアエルフ」
「………太ももを削ぎ落とされたエルフをそう呼称するのォ?」
「太ももを削ぎ落とされたエルフをそう呼称するぜ」
「……響きだけ聞くと何だか満たされてる感じなのに」
「満たされてる以前に欠けてるぜ、太もも」
「う、うん」
納得出来て無いの丸わかり、納得出来て無いなら説得するば良いだけの話。
削ぎ落とすシーンを細かく伝える。
手振りで。
「わかったよォ、うぅ」
「どうした、どうして涙目になる」
「いや、わ、私が悪いんだよ、キョウが頭悪いの忘れてた」
「二人とも悪いのか?!」
「そうだね」
「………キョウは頭良いだろう?」
「でもね、失敗ばかりだよ」
「太ももの削ぎ方、失敗しないようにするには」
「もういいよ?!」
えぇぇ。
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