閑話438・『盲目の可愛さ』
「叩かれた」
「そう」
「貴方のキクタはアタシだけでしょと言いながら笑顔で叩かれた後にキスされた」
「あいつ」
「キスされた」
「ロリエルフにキスされたぐらいで興奮しないのォ」
「だってキクタだぜ?」
「なにその理由の無い自信」
キクタにキスされたのが嬉しかったのかキョウは両手を動かしながら告げる。
すげぇ嫌だよォ。
「消毒しようよ」
ハンカチを取り出した瞬間にキョウが身構えてしまう、ええい、こーゆー時の反応は良いんだよねェ。
古びた床が軋む、緊張が緩和が訪れる瞬間を待って苛立っている、イライライラ。
「しねぇぜ」
「しようよ」
「キクタのキスだぜ?小さい桃色の唇だぜ」
「あいつがキョウの為にどれだけエルフで人体実験したと思ってるのォ」
「そこも健気で可愛いだろ」
「可愛く無いでしょ」
そうやって作り上げた実験体も美味しく頂いたしねェ、でもそれとこれとは話が違うよォ。
そもそもキスを許すなってお話。
それは私のものだろ。
私の。
「エルフなのに同族を改造して餌にするだなんて、可愛いわけ無い」
「そうかなぁ」
「可愛く無いよ」
「んー、可愛いと思うぜ」
「どうして?」
「俺しか見えて無いもん」
可愛いの基準がおかしいよね。
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