閑話436・『だきょうえるふ』

「妥協案」


「………キクタっ」


「妥協案じゃないよねソレ、打開案だよね」


「?」


「通しません」


あれから何度か会話を重ねたがキョウは折れる気配も無くキクタである事を強要して来る。


小屋は約束したから建てるけどね、エルフは飼わせない、それを胸の内にしまいつつ溜息を吐き出す。


キクタって名前は呪われている、きっとその名を与えられたエルフは狂う。


かつての彼女のように。


「エルフはキクタって決まりだろ」


「謝ろうね、キクタ以外のエルフに」


「キクタ以外のエルフはキクタだろ」


「――――愛され過ぎだろ、あいつ」


「キョウ、口調が下品だぜ」


「嫉妬もするよォ」


「ふーん」


「嫉妬もするよォ」


「いてててててて」


頭をポカポカ叩くとキョウは涙目になって部屋の隅に移動する、追い立てる事はせずに顎で呼び戻す。


恐る恐る近付いて来るキョウ。


「こんなに可愛い俺に――――これ以上バカになったらどうするんだぜ」


「一生面倒みます」


「す、素敵、いや、怖いっ」


「そこは素直に喜びなよ」


「名前はキクタ以外やだ」


「………」


「エルフはキクタと昔から決まってるぜ」


そりゃもう何千年前から決まってるだろうけど、それはキョウだけだからね?


全く。


「それじゃあキクタに許可を貰って来なァ」


「え」


そりゃそうでしょうに。

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