閑話422・『おなじさみしさ』
「キョウって良い匂いするな」
「何が目的」
「えぇぇぇ、何もねぇよ」
「そ、そう」
甘え上手で人を操作する術も覚えたキョウ、私の教育のせいかグロリアの教育のせいか――――どっちかな?
なので褒められても素直に受け取るのは……危険である、おねだりかお願い事か、だから少し突き放すような物言いになってしまう。
「良い匂い」
「う、うん、そうかな」
「美少女は匂いからして美少女」
「え、えぇぇ、言い過ぎだよォ」
「くんかくんか」
「きゃー」
抱き枕にされたまま匂いを嗅がれる、その度に体が大きく震える、他意は無いのかな?褒めてるだけ?
さ、最近にしては珍しいような気がする、油断は出来無い。
「俺の匂いも嗅いでー」
「え」
「………嫌か?」
「い、嫌じゃないけどキョウは嫌じゃない?」
「うん」
「くんくん」
甘ったるい匂いだ、しかし人工的では無い春風のようなさわやかさもある、嗅いでるだけで泣きそうになる匂い。
郷愁を誘うのに冷たく突き放すような。
風のような。
「どうだ?」
「……良い匂いだよ」
「えへへへ」
「お揃いなのか」
「俺とキョウは全部同じだろ」
私もこんなに寂しい匂いがするんだ。
悲しいけど嬉しい。
同じだもの。
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