閑話416・『あくおらず』

キョウが容赦無く死ね死ねと口にしながら涙と鼻水塗れの美少女顔で枕を投げて来る。


す、少し厳しくしただけなのに容赦が無い、しかしそれは仕方無い、私はキョウを慈しむ存在でキョウは愛される存在。


私はキョウの為なら何でもする。


で、でもこれはっ。


「しねしねしね」


「ごめんなさい」


恥も糞も無いので土下座をする、一応ベッドの上なので体裁は保ててはいるがキョウはそれ所では無いらしい。


一種の混乱状態にある、自分を最も愛してくれる存在に冷たくされた、過去のトラウマやら様々な傷口がさらけ出されておかしくなっている。


胸が疼く、癒したい、私が悪かった。


「しねしねしね、きらい」


「キョウ」


「ちかづくなァ」


「キョウ」


「うぅ、あく」


「そこら辺まで遡ってるか」


「あくあく」


手が虚空をなぞる、しかしそこには誰もいない。


彼女はいない、いるのは私。


残念。


「あく」


「そうだね、彼女がいたら良いね」


「う、ん」


「私では、ダメ?同じキョウだよォ」


「うぃ」


じーっと、攻撃色は――――瞳が揺らぐ。


『はくち』に染まる。


私の幼子。


「………しねぇ」


「ふふ」


抱き付かれる、背中をとんとんする。


ふぅ。

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