閑話406・『死体を蹴る爪先には2』

餌にしてくれと涙目で言われて思考が停止する、餌を捕獲しようとしたら餌が餌にしてくれと――――最初から餌なのに?


それを教えて上げようと口を開いた瞬間にそいつはサビだらけのナイフで自分の首を切り裂いた。


エルフ本人がそれをしたのだ。


伸びる筋肉の繊維。


つぷ、弾ける。


おいおい。


ぬくい♪


「血のシャワーだ」


『これはおもしろ痛快』


「そうか、寒かったから丁度いい」


『そうだね、懐炉になるね』


「ああ、餌だけかと思ったら懐炉にも、結局は消耗品だぜ」


『結局は消耗品、餌だろうが懐炉だろうがねェ』


「そう、なのか」


『そうなんです』


「えい」


死体になったエルフ、既に死後硬直が始まっている、それを爪先で蹴飛ばしながら確認する。


生体を蹴る事は良くあるけど死体を蹴る事はあまりない。


新鮮。


「えいえいえい」


『食べモノは粗末にしない』


「いや、生きてて襲って来たら怖いじゃん」


『死後硬直してるよォ』


「男だ、硬直させる事は得意だろ、罠かもしれん」


『――――――――』


「女の子だからな俺、襲われたら大変だ」


『下ネタ言う癖に』


「う」


『死体を蹴る女の子なんて女の子じゃありません』


「う」


説教された。

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