閑話397・『舐めるか食うかどうするか』
ぐすんぐすんと丸まっている娘が可愛過ぎたので頬を突いたら思いッきり噛まれた。
狩りをする時にこの牙は必要だが家族の間には必要無いのじゃ、血塗れになった指に吸い付く。
儂の体液には傷を癒す作用がある、血そのものが修復を速めてくれる、頬をリスのように膨らませた娘は知らんぷり。
他の指も食べるか?
「触んな、気安い」
「キョウ」
「―――俺の小屋」
「忘れなさい」
女性体のキョウは容赦無い、この子がエルフを学びたいと始めた事を干渉して破壊する、涙目になって枕を抱いて丸まっているキョウ。
ああ、慰めたいがどのようにすれば良いのか?撫でようとしたら指を持っていかれたのじゃ、うん、骨まで見えていて子供の顎が健康で嬉しい。
ええい、違う。
「エルフ小屋は湖畔の街で失敗したのじゃろ」
「失敗つーかいつの間にか壊れてた」
「……」
壊されたのだけどそれを言ったら戦争だ、そもそも儂は二人を揉めさすつもりは毛頭無い、うーん、尾を振りながら思考を走らせる、ええい。
この子がこれだけ傷付いているのに何も癒してあげられない。
口惜しい。
指痛い。
「ゆ、指が痛いのじゃ」
「つーん」
「き、キョウ」
「指より小屋」
「うぅうう、痛いのじゃ」
「――――――」
「うぅ」
「謝んないぞ」
「当然なのじゃ」
「ふん」
「うぅ」
「…………おい」
「な、何なのじゃ」
「……舐めてやる」
噛んだり舐めたり好きにしてくれ。
ああ、好き。
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