閑話388・『えるふにく2』

廃墟、つい先程まではエルフ達が日常を過ごすための空間だった。


それを蹂躙して破壊するのは空腹のエルフライダー、彼女たちを食べないと死んでしまう生き物。


だから仕方が無い事なのだ、エルフを飼うと意気込んでいたのにこの有様なのは少し哀れだ、


所詮は生き物としての本能に従う。


『あの小屋無駄になっちゃうねェ』


「もぐもぐ、けぷ」


『ほらほら、落ち着いて食べなぁ―――おバカさん』


「もぐもぐもぐ」


『ふふ』


「もぐもぐもぐ、牛より、豚より、鶏よりエルフがうまい」


『全部殺してさァ、あの小屋は良いのォ』


「こや?」


『太もも』


「ふともも……エルフの太ももはうまいぞ、少し焼いてもうまい」


『だから注意したのにィ、可愛そうな子』


「?」


夕焼けと血の色が混ざりあって世界はほぼ赤色で構成される、赤色、オレンジ、キョウの生み出した風景。


何時だってこの景色を作り上がて来た、男の時も、姉の時も、この地上に落とされた時も。


ずっとずっとこの色合いの景色を作り上げた。


ずっとずっとずっと、変わら無い色合い。


変わら無い食欲。


変わら無い記憶喪失。


逃避――――――――んふふ。


小屋、壊しちゃおうね。


「えるふのふとももうまい」


『ちぇ、私の太ももに夢中だったのにィ』


「うまうま」


『すぐに浮気しちゃうんだから』


私の太ももも食べてみなァ。

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