閑話381・『ん?』

街の敷地に作るとキョウに気付かれるので湖畔の街の近くにある小高い丘の上に小屋を建てた。


中々に立派な作りだ、犬が住むには勿体ない、人間が住むにはやや武骨すぎる、中庸のそれを撫でる。


「出来たぜ」


「……姿が見えないと思えばこんな所でっ」


「ひぃ」


「そんなに怯えられると純粋に傷付くんだけどォ」


「ま、また小屋を壊して太ももっ」


「落ち着きなさい」


ぺしっ、頭を叩かれる、微妙に痛く無いように気遣いしてくれている―――振り向くとそこには一人の少女が佇んでいる、まだ子供と言っても良い年齢なのに妙な色気がある。


その服装に見覚えがある、胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白、グロリアや俺と同じ修道服、ベールの下から見える金糸と銀糸に塗れた美しい髪。


太陽の光を鮮やかに反射する二重色………黄金と白銀が夜空の星のように煌めいている、見る者を魅了するような美しい髪、瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている。


黄金と漆黒、左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている、全体的に線が細くて儚げな少女、シスターである事は疑いようが無いがシスターの枠に収まるような個性でも無い。


小屋壊しのキョウ。


「ん?何だかイラッてしたよォ」


「気のせいだぜ」


「……しかしまた、小屋を……」


「お前もまた太ももを……」


「黙ってねェ」


「いてててててててて、耳が千切れるっ」


「全く、壊しはしないよ」


「え」


「どうしたのォ?」


だって壊さないと―――足を振り上げないと太ももが――――ん?


なんの目的でこれ建てたんだっけ?


「ん?」


「な、なぁに?」


「ん?壊して良いぜ」


「は?」


「ん?」


ん?

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