閑話373・『エルフ飼いライダー』
「エルフを飼いたい?」
「いや、エルフって何を考えてるのか、飼ったらわかるだろ?」
「駄目、うちにはキクタがいます」
湖畔の街で気持ちを告げたら問答無用で否定された、キョウは薄く笑っている、嘲笑っている。
エルフを飼いたいと強請ってみる、おねだりは得意だ、どいつもこいつも俺の可愛さに蕩けてすぐに頷く。
しかしキョウは筆を走らせる手は止めずに冷たく呟くだけ。
この野郎。
「飼いたい」
「だぁめ、お世話出来無いでしょう」
「ちゃんとする」
「翌日にはお腹の中だよォ、ペットでは無く家畜なら良いけどォ」
「い、嫌だぜ、飼う」
「じゃあ駄目」
「か」
「絶対にダメ、餌に対してどうした?頭おかしくなっちゃった?」
「え、エルフは」
「えーさ」
「うぅ」
「餌だ、諦めなァ、キクタは違うけどね、あいつはエルフにしては『上等』だ」
キクタが特別なのは理解している、しかしそれが『ある』からとエルフを飼育しては駄目だと?
強引だ、そもそも可愛い半身がペットを飼いたいとお願いしているのに、お願いしてやっているのに。
この俺がっ。
「チッ」
「あらら、舌打ちしても駄目」
「うぅうう」
「餌が少し懐いたからって『どんな生き物』か観察したくなるんだなんて滑稽」
振り向いたキョウは何処までも無表情で。
何処までも酷薄で。
突き離す。
「そんなに飼いたいなら飼えばァ?私もエルフライダー、食べちゃうよソレ」
何処までも。
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