閑話372・『干した魚に個性を求む2』
何時もの様にキョウがエルフを食べた、当たり前の事を当たり前に行った。
小さなエルフが体をくねらせながら愛情を呟きながら『出会ったばかり』のキョウに食べられた。
事実としてはそれだけ。
現実としてはそれだけ。
「ん?」
『どうしたの?』
「けぷぅ」
『あら、お行儀が悪いよォ』
「けぷぷく」
『エルフ臭い吐息』
「そうか?しかし懐くエルフはいらねーな、食い難い、邪魔」
伸びをしながら沈む夕日を見詰める、黄昏は終わり夜が来る、あの世とこの世の合間が終わるのだ、何時もの様に。
キョウの思考が私に流れ込む、それともこれは私の思考?わからなくなる。
キョウは戸惑っている、エルフの行動に戸惑っている。
「でも、どうして食う奴を讃えるんだろう?」
『エルフはそーゆーものだからねェ』
私の言葉に無意識か舌打ちをするキョウ、いや、舌打ちとも言え無い程の小さな『不満』だ。
悩むな、私に夢中になってェ。
「それでも悩むぜ」
『どぉして』
「どうしてって」
ベッドの上で溜息を吐き出すキョウ。
その不満は私には響かない。
その不満は『不満』ですら無い。
「どうして、そんなに何も感じないんだ―――怖い」
『ふふん』
「キョウっ」
『餌が逃げようが崇めて来ようが餌は餌だよ、魚の干物を食べる時にその魚の性格を知りたい?』
「あ」
『変なキョウ』
変なキョウ。
餌に名前でもつけて飼う?
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