閑話364・『怨歌』
エルフ以外の味を覚えたので教育は大変だ。
エルフを食べたいって欲求は強いものの目の前にするまで他のモノでいいやと思っているキョウがいる。
うん、ダメだ。
「エルフを食べよう~、体に良いエルフ~」
「どうしたキョウ、変な歌を口ずさんで……脳味噌がおかしくなったか」
「酷い!?き、キョウの為を思って考えたのに」
「お、俺の事を考えてそんな不気味な歌を――」
「え」
「……呪いたいのか」
警戒しつつ後ろに下がるキョウ、狭い室内では逃げ場はない、そもそも私も追い込むつもりは無い。
キョウは左右の違う瞳を細めながら何事かと疑っている、何事でも無いよォ、純粋にエルフの魅力を伝えようと作詞・作曲しただけ。
ぶ、不気味?
「不気味とは失礼なァ」
「もう一回歌ってみ?」
「エルフを食べよう~、体に良いエルフ~」
「ひぃ」
キョウは涙目になって後ずさる、歌は下手では無い、曲調と歌詞に問題があるのだろうか?
威嚇する小動物のような姿のキョウを見て頭を抱える、ええい、何処もおかしい所なんて無いよォ。
「に、逃げないでよォ」
「な、なんかエルフの怨念を感じるぜ」
「あー」
確かに食べられるエルフからしたらとんでもない歌だ、しかし私が歌ってるのだから怨念も何も無い。
じりり、涙目になって壁際に背を預けるキョウ。
「エルフを食べる気になったァ?」
「うぅ」
「食べる気になったァ?」
「食べます、食べます」
「………何か違うなァ」
「ひぅ、その歌止めてェ」
一緒に歌いながら捕食するつもりだったのに。
おかしい。
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