閑話358・『獣おそろしや2』

目の前の少女は自分と同じ匂いがする、安心する。


しかし歩行の仕方が違う、怖いので毛を逆立てて威嚇する。


「お、おーい、キョウ、ど、どうしたのかなァ」


「ふーふーふー」


同じ種である事は明確だがその些細な違いが物凄く怖い。


ち、近付かないで欲しい。


欲しい。


「ほーら、怖く無いよ」


「ふーふー」


「き、キョウちゃんだよォ」


「うーーーーー」


「だ、ダメだ」


どれだけ威嚇しても諦め無いで近付こうとして来る、どれだけ威嚇してもニコニコ笑っている。


あああ、俺だ、こいつ俺だから俺が好きなんだ、俺の言葉に従うんだ。


ふふ。


「おいでおいで」


「?」


「キョウは何がしたい?」


「えるふ」


「エルフ?」


「たべたい」


「たべたい――――おっと」


強烈な飢餓を視線で訴える、同様の存在、すぐに精神は同調して干渉し合う。


しかし透明な触手は相手の触手に絡め取られて沈黙する。


同じ♪


「はぁ、私まで簡単に支配出来るようになったねェ」


「んー」


「はいはい、次は抱っこですか」


両手を差し出して訴える、お前は俺なのだから俺のしたい事がわかる。


素晴らしい。


「よしよし」


「んーんー」


俺も二足になりたいなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る