閑話357・『風立ちぬ、胸足りぬ2』
「こうか!」
「どうだろ」
湖畔が見下ろせる小高い丘の上、キョウに言われたので狩りの練習をしている、走り回って架空の敵を追い詰める。
何も考えずに衝動のまま体を動かすのは楽しいぜ、妄想の中でエルフを殺すの楽しいぜ。
兎に角楽しいぜ、キョウに叫ぶ。
「エルフは華奢なので飛び込んで押さえたたらすぐに黙る、すぐに食える」
「エルフは魔法が得意だから魔法で反撃されるかもよ」
「え、えぇぇ」
「ほらほら、対処」
「よ、避ける」
「すると隙が出来るよね?押さえ込んでいた腕は?逃げられるよ?」
「うぅうう」
「今まで習性と感性だけでやって来たからねェ」
「いいじゃん、才能最高っ」
「その才能に食い殺されそうになるのがキョウじゃん」
「え」
「うん」
俺が頷くとキョウは顔を蒼褪めさせて手招きする、汗を激しく垂れ流しながら目線が泳ぐ。
な、何だぜ。
「キョウ、エルフライダーの能力に溺れていると……心が壊れるよ」
「ふーん」
名もわからぬ雑草を抜いて振り回す、何をそんなに怯えているのかわからん。
俺は強いぞ?それなのに説教は続く。
「自覚が足りない」
「うぅ」
「努力も足りない」
「うぅ」
「胸も足りない」
「それはキョウもだぜっ」
それに胸はグロリアに勝ってるので十分だぜ?
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