閑話356・『風立ちぬ、胸足りぬ』

「こうか!」


「どうだろ」


餌やり係に全てを任せるのはちょっと、そんなこんなでエルフを捕まえる練習、湖畔が見下ろせる小高い丘の上。


キラキラと水面が輝いている、鮮やかで眩しくて綺麗、キョウは野原を駆け回りながら楽しそう、肉食獣が子に狩りを教えるソレ。


ううーん。


「エルフは華奢なので飛び込んで押さえたたらすぐに黙る、すぐに食える」


「エルフは魔法が得意だから魔法で反撃されるかもよ」


「え、えぇぇ」


「ほらほら、対処」


「よ、避ける」


「すると隙が出来るよね?押さえ込んでいた腕は?逃げられるよ?」


「うぅうう」


「今まで習性と感性だけでやって来たからねェ」


「いいじゃん、才能最高っ」


「その才能に食い殺されそうになるのがキョウじゃん」


「え」


「うん」


気付いていないのか……恐ろしい子、狩りの練習を中断して手招きをする、物凄く怖いけど聞かないと。


え、気付いて無いの?


「キョウ、エルフライダーの能力に溺れていると……心が壊れるよ」


「ふーん」


名もわからぬ雑草を抜いて振り回している、まんま子供の反応―――危機感が足りないよォ。


危機感が足りない癖に飢餓感だけは物凄い、どんな生き物?


「自覚が足りない」


「うぅ」


「努力も足りない」


「うぅ」


「胸も足りない」


「それはキョウもだぜっ」


あっ、そうだった。


くすん。

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