閑話355・『積み木精神2』
「餌やり係がいるとはいえ……キョウ自身がエルフを捕まえないとね」
「あん?」
積み木をしていたら後ろからキョウの声がする、振り向く瞬間に僅かに指が積み木に触れてしまい力作が一瞬で崩れる。
刹那の出来事……努力の残骸の後にキョウを見詰めるとダラダラ汗を垂れ流している。
目も泳いでいる、全ての責任を擦り付けるチャンス。
ちゃんすだぜ、うん、うん。
「お、俺の力作が……キョウのせいだぜ」
「あ、案の定だよォ」
「あ、謝って!」
「うっ」
興奮状態になると落ち着いていた精神がすぐに崩れる、この積み木のように容易く素早く崩壊する、口調もやや幼くなってしまう。
衝動のままに謝罪を要求するがキョウは首を縦に振らない、なまいき、生意気っ。
ああああああああああ。
「謝って」
「おっと」
積み木を容赦無く投げつける、しかしキョウはステップするように軽やかに回避……バカにされているような気持ちになって何度も積み木を投げる。
狭い室内では避ける範囲が限られるけど前後の動きを加えて斜め移動をして回避、俺の予測を遥かに凌ぐ、身体能力は同じでも状況把握能力はキョウの方が上。
俺は全てに劣る。
おれは、だからおまえがまもれよ、おれを。
「えいえいえいえいえいえいえいえいえい」
「ほいほいほい」
「えいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえい」
「ほいほいほい」
「うー」
「終わりかな?」
「終わりだぜ」
「全く、えい」
近付いて来たキョウに押し倒される。
まけた。
いつも。
きょうかっこいい、おとこらしい、しゅき。
きょうはおんなだよ?あれ、あれ。
「落ち着いた?」
「何時だって俺は落ち着いてるぜ、餌の話だろ?」
「う、うん」
「教えて教えてー」
キョウみたいに強くなりたいから教えて。
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