閑話354・『積み木精神』

「餌やり係がいるとはいえ……キョウ自身がエルフを捕まえないとね」


「あん?」


積み木をしていたキョウは振り返り様に煩わしそうに睨む、その際の不手際で積み上げた積み木が全て倒れる、崩壊。


そしてその残骸を見詰めながら悲しげな顔をする、ぇぇぇぇぇ、私のせいじゃないよねェ?開けっ放しの窓から風が吹き込む。


この重い空気も攫って欲しいよォ。


「お、俺の力作が……キョウのせいだぜ」


「あ、案の定だよォ」


「あ、謝って!」


「うっ」


興奮状態になると落ち着いていた精神がすぐに崩れる、この積み木のように容易く素早く崩壊する、口調がやや幼くなってしまった。


既にスイッチは軽く入っている、焦る、未だに『治め方』がわからないよォ。


「謝って」


「おっと」


積み木を容赦無く投げて来るので回避する、ステップするように軽やかに……するとそれに苛立ったようで次々に積み木を投げる。


狭い室内では避ける範囲が限られるけど前後の動きを加えて斜め移動をするだけで大体避ける事が出来る、単純な左右の動きでは限界がある。


「えいえいえいえいえいえいえいえいえい」


「ほいほいほい」


「えいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえい」


「ほいほいほい」


「うー」


「終わりかな?」


「終わりだぜ」


「全く、えい」


近付いてキョウを押し倒す、抵抗は無い、まるで初夜を迎える少女のように可憐で儚い。


エルフライダーの能力に狂う手前で自浄したようだ、毒を、ね。


積み木投げ飛ばす事で……はぁ。


「落ち着いた?」


「何時だって俺は落ち着いてるぜ、餌の話だろ?」


「う、うん」


「教えて教えてー」


何時もこんなに素直だったらなぁ。

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