閑話349・『獣おそろしや』

症状が悪化すると高圧的になり冷徹になり被虐的になり可愛い少女に成り下がる。


なのでキョウに虐められるのは当たり前のモノとして受け入れている、しかし今回は何かが違う。


幼くなって攻撃的なのは相変わらずだがすぐに怯えて逃げてしまう。


「お、おーい、キョウ、ど、どうしたのかなァ」


「ふーふーふー」


端正な顔を歪めてはいるが端正過ぎて美少女なのは変わらない、口の両側から透明な涎を垂れ流しながら必死に威嚇して来る。


しかし悲しいかな、美少女である所のキョウがどれだけ威嚇しても怖くない、滑稽で愛らしいだけで何も恐ろしい所は無い。


「ほーら、怖く無いよ」


「ふーふー」


「き、キョウちゃんだよォ」


「うーーーーー」


「だ、ダメだ」


全裸で無いだけで中身は獣だ、しかも動物組の細胞が活性化しているわけでは無く純粋に私を警戒して威嚇して来る。


能力に酔うと様々な変化が出るけどコレは一体なんなんだろう、そしてどうして自分自身に威嚇されてるんだろ?


お、おーい。


「おいでおいで」


「?」


「キョウは何がしたい?」


「えるふ」


「エルフ?」


「たべたい」


「たべたい――――おっと」


キョウの瞳を見詰めていると強烈な飢餓と眩暈に襲われる、同様の存在、すぐに精神は同調して干渉し合う。


私までこのキョウになったら誰がキョウのお世話をするの?あの爬虫類?


ご冗談を。


「はぁ、私まで簡単に支配出来るようになったねェ」


「んー」


「はいはい、次は抱っこですか」


両手を差し出してキラキラした瞳で見詰めて来るキョウ。


その際も精神を汚染しようと触手を伸ばす、でも無駄。


同じだから。


「よしよし」


「んーんー」


大きくなぁれ。

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