閑話347・『甘えろバカ』

「灰色狐に甘えてしまったァ?」


「―――言うな」


咳き込みつつ胸元をゆるめるキョウ、言うなと言いつつ内容を全て私に話しちゃったし……別に良いんじゃないの?


私は色々と今後の計画を練っていて忙しい、キョウは折角の湖畔の街なのに体調不良で寝ている、そこからぽつりぽつりと語ってくれた。


最初は頷いていただけだが話も後半になるとついつい前のめりに。


「言ったら殴る」


「えぇぇ?別に母親なんだから甘えてもおかしくないでしょうに」


「えい」


ぽかっ、キョウの力無い腕が私の頭に突き刺さる、エルフライダーの能力の酷使による疲労で身体機能は著しく低下している。


叩かれても痛くないけど様式美として頭を擦る。


「可愛い~、反抗期だね」


「はぁ?!」


「だってそうじゃん」


「ち、違うぜ、か、家族でも」


「百パーセントそうじゃん」


「う、うっさいな」


「くふふ、甘えられる内に甘えときなよ」


「………」


「真っ赤にしちゃって可愛いなァ」


「す、少し弱ってて弱気になっただけだぜ」


「へえ、じゃあ今も?」


詰め寄るとキョウはお尻をモジモジさせて後ずさる、そうなんだ、弱っているだけで甘えてくれるんだ、素直になれるんだ。


灰色狐にじゃなく私に甘えれば良いのに、あんな畜生の類では無く。


弱ってるんでしょ?弱気になってるんでしょ?


私に甘えろ。


ねえ。


「か、顔が近いぜ」


「元々は一つだから関係無いでしょ」


「うぅ」


「ねえ、条件は同じでしょ?私に甘えろよ」


ねえ。


ねえ。


ねえ。

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