閑話343・『殺狐異臭2』

ベッドの上で丸まって鼻をすする、ぐしゅしゅしゅ。


しんどい、風邪では無い、何時もの発作だ。


エルフライダー、面倒な生き物。


飼う時を気を付けてね?


「くしゅんくしゅん、ずず」


「風邪かっっ」


「う、うるさいなぁ」


ベッドの隅に移動する、灰色狐の愛情は時折しんどい……自分はそんなに愛される存在では無い。


愛したいけど愛されるのは酷な時がある、そんな俺の目の前にモフモフの灰色をした毛玉――照れ臭そうにお尻を向ける灰色狐。


狐の尻尾。


「ほら、温めてやろう」


「もふもふ毛玉だぁ」


「そ、その言い方は止めてくれぬか……威厳が」


「喋るもふもふ毛玉だぁ」


「ぉぉ」


狐の尾の毛量は多い、灰色狐のソレはさらにモフモフ感が増量されておる。


俺はそこに顔を突っ込んで尾の付け根に顔を擦りつける、んにゅ、モフモフ、甘い匂い。


お日様の匂い。


「うわぁ、毛玉ぁ」


「その感想が母の心を傷付ける」


「もふもふ毛玉ぁ」


「その感想でも母の心は傷付く」


「すんすん、獣臭いっ」


「あう」


「良い匂いだぜ?」


ぽふ、毛玉から顔を出して後ろから首元に腕を絡ませる。


おれのもふもふ。


これ。


「うぁぁ、ぐらぐらする」


「よいよい、落ち着くまで一緒に寝よう」


「う、ん」


獣臭く無いよ。


優しい匂い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る